第25話
「私、制服のままなんだけど。皺になったりしたらどうしよう」
「気にすんな。俺は紫花の寝相のが心配。落ちんなよ」
「そっちこそ心配ご無用です」
「紫花寝相悪いから」
「いつの話をしてるの」
制服の皺を気にしてかなり躊躇しつつも、結局諦めて横になる。コウくんは、羽織っていたらしいシャツを私の膝の上に掛けてくれた。
「ありがと」
「おう。よし、寝るぞ」
部屋に入って来た時は生暖かい風を少し不快に感じたけれど。
テラスの影にリクライニングチェアを倒して、横になってみると、そよそよ、そよぐ夏風はとても心地の良いものだった。
仰向けになり、そっと目を閉じる。静かな空間に、小さな寝息が聞こえる。横をみると、同じように仰向けになったコウくんが既に眠っていた。
「寝るの、はや…」
私も寝よう、そう思うけれど、やっぱり眠れない。
制服が気になるからなのか、それとも他の何かが気になるからなのか。その答えは自分でもわからない。
仕方なく、私は起き上がり自室に向かう。階段を上がり部屋に入ると、机の上にさっき樹理ちゃんに預けたバッグが置いてあった。
膝丈のワンピースに着替えて、春にコウくんがイギリスに行ったときに買ってきてくれた英文学の本と辞書を持ち、リビングへと向かって。
入ってみると、やはり少し日が落ちたのか、帰ってきたときとはまるで違う雰囲気のリビング。太陽の光は、ここまで部屋の印象を変えてしまう。
テラスへと向かうと、コウくんとシェリは私が部屋を出て行った時と同じ体勢で眠っていた。
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