第24話

覗き込むために背もたれに手を付くと、高そうな本革の感触がした。コウくんはラフな格好で、ぐっすり寝ている。




寝顔すらも、隙がない。

欠点が見つからない。

白い肌と通った鼻筋。




少し開いた唇をみた瞬間、咄嗟に目を逸らしてしまった。



覗き見とか…!と無性に恥ずかしくなって俯くと、耳にかけていた髪が落ちて、コウくんの顔を擽ってしまって。




「ん、……」




酷く色気を含んだ声が、私の耳に伝わって。



ぞわり、今日の朝も感じたけれど、でも朝に律に感じた不快感とは全く異なる感覚が、身体を一筋貫いた。




「しいか、」


「ごめんね、起こしちゃった」


「おかえり」


「うん、ただいま」




コウくんは眠そうに目を瞬かせながら、視線をリビングの時計へと移す。時間を確認すると、ふわり、と無防備に欠伸をした。




「まだ寝てたら?」


「紫花、お前のリクライニング使った?」


「使ってないけど…」




コウくんがいないと、リビングが広すぎて、出張中は殆どここには来ない。夕食はダイニングだし、テレビもソファも与えられた自室にある。




「高かったんだから使えよ。ほら、今」


「え、いま?」




眠そうだけれど、はっきりとした口調で私にそう告げるコウくんに、拒否権はないことを知る。



色違いのリクライニングチェアをリビングからテラスに運び、コウくんの隣に並べると、シェリが嬉しそうにチェアに顔を擦りつけた。

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