第23話

リビングに入ると、冷房の人工的なものではない、自然の風が私の髪を攫っていく。夕方といっても夏だから、まだその風は熱を含んでいて。




白壁を基調に白やダークブラウンの家具が揃えられ、木の質感が馴染んでいるリビングは、とっても居心地が良い。




高い天井には小さな窓があり、そこから漏れる光がシーリングファンを照らして、幻想的な影を作る。




南側は全て窓になっていて、全て開けると庭が一望できるテラスがリビングと自然に繋がる。




お気に入りの場所に、コウくんはいた。

リクライニングチェアの上で眠っているみたい。




リクライニングチェアは、この前出張でデンマークに行ったときに、わざわざ実物を見て買ってきたものらしい。私の分もリビングに置いてある。




起こさないように、そーっと近づくと、もふもふとした巨大な物体がコウくんの足元で寝ていた。




「玄関まで来てくれないと思ったら、ここにいたの?シェリ」




いつもは帰ると、押し倒す勢いで飛びついてくる愛犬が今日は来てくれずに不思議に思っていたけれど。



シェリは大きな図体をでろーん、と広げ、安心した顔で眠っていた。




出張中でもテレビ電話でコウくんと会える私と違って、シェリにとっては1週間ぶりのコウくんだし、そっちを優先するのは当然だと言える。




「シェリ、ただいま」




しゃがんで、シェリの頭と鼻を撫でると、倦怠そうに目を開いたシェリは、私の機嫌をとるようにぺろり、と指を舐めた。




膝を床につき、背もたれが倒されたリクライニングチェアに寝ているコウくんの顔を覗き込む。

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