第19話

律はニヤリ、と嫌な笑みを浮かべて。




「甘いんだよ、先生」




そう言うと、先生に掴まれていない方の手で、私の先生に掴まれていない方の手首を捕まえる。



そして、




「紫花、これ、プレゼント?」


「う、ん」


「妬ける。でも、色白の紫花によく似合ってるよ」




吐き気がするような台詞を吐き、そのままブレスレットのハートのモチーフに口付けた。




片手は怪力の先生に捕まり、もう片方は律に捕まっている。逃げられない恥ずかしさに顔が赤に染まる。




モチーフが押しつけられた冷たさと、律の唇の熱が手首に伝わり、ぞわり、と全身の毛がよだつ。



ひい、と情けない小さな悲鳴が思いがけず口から漏れた。




「ドキドキした?」




軽く私に話しかける律に、軽く、いやだいぶ殺意が生まれる。



ぱっ、と同時に解放された両手。先生は私を掴んでいた方の手で、律の自由だったほうの手を掴む。




「いて!」




律が叫んだから、多分先生はその怪力をフルに活用し、律を連行しているんだろう。




男性って欲求に忠実すぎる。だから、コウくん以外の男の人は好きになれないのだ。

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