第18話

今日巻いてるんだね、と私のカールさせた黒髪を指に巻きつける律の手を叩き落とした。




「相変わらず冷たいな」


「軽々しく触らないで」


「防御固いくせに、"コウくん"と電話しただけでそんな顔するとかね」


「そうやって浮つくの止めたら?」


「紫花が俺を愛してくれるなら?」


「それなら一生浮ついてて」




植盛 律(うえもり りつ)は、こんなんでも相当いい所の御子息だ。



植盛家は、主にホテル経営をしていて。

全国に収まらず世界中で、ビジネスだけでなくリゾート関係のホテルなどを経営している。




男性にしては長めの髪は、緩くパーマをかけていて、恵まれた容姿と経済力とコミュニケーション能力で女の子を取っ替え引っ替え。




自分の名前を使い、家が経営している高級ホテルのスイートルームに女の子を連れ込み如何わしいことをすることを、何よりも楽しみにしているような奴。




転入したときからだから、もうこの馴れ馴れしさには慣れている。慣れていても、触られたくはないけれど。




かつんかつん、と階段を上がる音にふたりで振り向くと、そこには1時間目の担当の教師がいて。




「植盛くん、永藤さん、授業始まりますよ。教室に行きましょう」




物腰は柔らかく言葉遣いは丁寧だが、華奢なおばちゃん先生という見た目とは裏腹の怪力で私たちを引っ張っていく。




「先生、俺ちゃんと自分で歩けるんだけど?」



「植盛くんは手を離すとすぐにどこかに行ってしまいそうですから。授業はきちんと受けて頂きます」

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