第17話

携帯を持ち教室を飛び出した私は、螺旋階段を上がったところにあるソファに腰を下ろす。



もうすぐ授業が始まるから、廊下には殆ど人もいない。



プルルル、プルルル、と無機質な呼び出し音が続いて。



もう寝ちゃったかな?と思った瞬間に、無機質な音はシャボンが弾けたように色づいて、コウくんの声が私に届いた。




『もしもし』


「もしもし、コウくん?寝てた? ありがとう、ブレスレット。凄く可愛い」


『おー。どういたしまして。お前付けられるのも気づかないとか無防備すぎ。って、もう授業じゃね?ちゃんと受けろよ、サボんな』


「サボらないよ、コウくんと違うんだから。 じゃあ行くね、コウくんもゆっくり寝てね。ばいばい」




幸せな気持ちになりながら、通話が切れた携帯を握りしめる。さて、教室に向かわなきゃ。



――――…と、




「紫花さん?彼氏ですかー?」


「っ、律、おはよう」


「"コウくん"って誰だよ。今の顔、めっちゃ優しげだな。記念撮影すっか」


「聞いてたの?マナーが悪いよ、律」


「螺旋階段なんだから響くんだよ、馬鹿」




そう言われて、確かにここは響くことに気付く。律ばかりを責めてばかりはいられない。




「紫花にそんな顔させる奴とか、本気で気になる」

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