第16話

「あれ?紫花それ可愛いね」


「え、なに?」




可愛いー、と言う麻耶にいきなり私の手首を掴み上げられ、私は狼狽えるばかりだったけれど。




「あれ?なにこれ」




私の手首には、華奢な銀細工のブレスレット。自分で身につけた覚えはないから、勿論つけてくれたのはコウくんだろう。




そういえば、南米は銀細工が有名って聞いたことある。




ブレスレットには何個かの小さなピンクの天然石と、スワロフスキーで象られたハートのモチーフがついていて。窓の方向を向いて腕を少し振るだけで、きらきらきらきらと輝く。




その上品で控えめな輝きは派手過ぎず、学校につけてきてもなんの問題もなさそうだ。




何度も行った場所でも、コウくんはその度にお土産を買って来てくれる。そしてそれは、毎回とてもセンスがいい。




「綺麗ね。プレゼント?」


「うん、そうみたい…」


「そうみたいってなによ」


「気づかなかったんだもん」




いつも俺は手先が器用だ、と豪語しているコウくんは、こんなところでもその特技を発揮してしまうんだ。




「ちょっとお礼の電話、してくる」




もうすぐ授業が始まってしまうけれど、そんなことより。一刻でも早くコウくんに電話がしたくて。

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