第13話

準備は怠らないらしい吉野さんが用意しておいてくれた、大きめの移動用のケージにその子を入れてもらって。



一目惚れで犬を決められたからか、私たちは想像以上の早さでブリーダーさんの家から帰路についた。




「可愛いですね」


「な、本当に可愛い」




ケージは小さくないはずなのに、鼻息荒く私たちを見るその子は白くもふもふで、狭いのかと一瞬心配になる。人差し指を近づけると、少し湿った鼻を擦り付け、そのあとにいちど、ぺろりと舐めた。




「なんでこんなに突然だったんですか?」




純粋に零れた疑問。だって、荷物も運び終わってなかったし。いつでも、ううん、今日よりよっぽどゆっくりとブリーダーさんのところに行ける日があったはずなのに。




「今日から新しい家で、新しく生活を始めるのに。犬だけが、混ざるの遅いんじゃ可哀想じゃん」




な?と、もふもふに語りかける光綺さんに温かい気持ちが込み上げる。この人は、本当に優しい人だ。




「このわんちゃん、コウって名前にしようかな」


「俺と被るじゃん」


「だって、光綺さんみたいに優しい子だし。光綺さんは大学生になったらもっと忙しいでしょう? そんな時に寂しくないように」

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