第13話
準備は怠らないらしい吉野さんが用意しておいてくれた、大きめの移動用のケージにその子を入れてもらって。
一目惚れで犬を決められたからか、私たちは想像以上の早さでブリーダーさんの家から帰路についた。
「可愛いですね」
「な、本当に可愛い」
ケージは小さくないはずなのに、鼻息荒く私たちを見るその子は白くもふもふで、狭いのかと一瞬心配になる。人差し指を近づけると、少し湿った鼻を擦り付け、そのあとにいちど、ぺろりと舐めた。
「なんでこんなに突然だったんですか?」
純粋に零れた疑問。だって、荷物も運び終わってなかったし。いつでも、ううん、今日よりよっぽどゆっくりとブリーダーさんのところに行ける日があったはずなのに。
「今日から新しい家で、新しく生活を始めるのに。犬だけが、混ざるの遅いんじゃ可哀想じゃん」
な?と、もふもふに語りかける光綺さんに温かい気持ちが込み上げる。この人は、本当に優しい人だ。
「このわんちゃん、コウって名前にしようかな」
「俺と被るじゃん」
「だって、光綺さんみたいに優しい子だし。光綺さんは大学生になったらもっと忙しいでしょう? そんな時に寂しくないように」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます