第11話
引っ越してきた第二邸は、手入れが行き届いた広いお庭を持つ、とても大きなお屋敷で。
「わ、大きいですね」
「紫花、出かけよ」
感嘆の息を漏らした私に返事をせず、荷物も運び終わっていないのに、コウくんは私を誘う。
「お家の探検、してみたいです」
小さくそれを拒否すると、「そんなんいつだっていいじゃん」と言ってコウくんは私を抱き上げ、車へと歩いていって。
屋敷の探検は諦め、吉野さんが開けてくれていた車に大人しく乗り、コウくんの隣へ座った。
「どこへ行くんですか?」
「紫花は大きい犬と小さい犬どっちがいい?やっぱ小さいやつ?」
「大きいやつのほうが好きです、大きくて白いやつ」
小さい犬がいい、と私が言うと思っていたらしいコウくんはとても意外そうな顔をして。でも直ぐに、了解、と微笑んだ。
しばらく吉野さんの静かな運転に揺られていると、街中とは全く違う、まるで別の世界に来てしまったようにも感じさせる長閑な風景が広がる。
長い塀と大きな敷地を持つ家に着くと、コウくんは小さな私の手を引いて、ずんずんと中に入って行った。
「桐谷さん、こんにちは」
「こんにちは。大型で白い犬っています?」
「こちらへどうぞ」
どうやら、ここは、大型犬のブリーダーさんの家のようで。
長い石造りの塀に似合わない明るい色が施された看板に書いてあるとおり、広い土地を生かして大型犬の子犬をのびのびと育てているらしかった。
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