第4話

車の知識は普通の女子高生か並以下の私は、明らかに高級車のコウくんの車のことを何も知らない。ただ、身体が程よく沈むシートは心地良くて好きだけれど。



申し訳程度に流れている洋楽。静かな車内ではどんなに小さく掛けていてもはっきりと聴こえて。




車庫から出ると、閑静で高級な住宅街を黒の光沢を朝日に照らされながらコウくんは優雅に運転する。



ハンドルを握る男の人の手とか、運転中だけ眼鏡を掛ける綺麗な横顔とか、もう全てが大人で恰好良い。




住宅街を抜けると、街の朝のごちゃごちゃとした雰囲気が溢れる景色が目に入り、すぐに出て行く。季節は夏、夏休みの後半。学生は少なくて。




そのまま少し車に乗っていると、私の通っている高校が見えてきた。全校で夏季課外が始まっているので、道に沿って沢山の送迎の車が連なっている。




西洋風で歴史を感じさせる建物はきらきらと弾けるような春の朝日に照らされて、まるで写真のように周りの景色から切り取られているように見えた。




「懐かしいな」


「コウくんだって通ってたじゃない」


「もう8年も前だし。大学だけは同じ敷地じゃないしな」




26歳のコウくんは、大学生と言われてもギリギリ納得できる若々しい風貌。でもやっぱり18歳の同級生と比べると確かに大人の色気を醸し出す王子様は、物珍しそうに外を見る。




「何か変わったところ、ある?」


「んー、ない。朝と夕方に送迎の車が連なる光景とかも、なんも変わってねーし」


「コウくんは吉野さんに車で送ってきて貰ってたんだよね?」


「前住んでたマンションからは結構距離あったからな」

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