第3話
気づくとゆっくり朝ごはんを食べすぎていて。
優雅に食後のコーヒーを朝子さんに頼んでいるコウくんを尻目に、バタバタと自分の部屋に戻った私は、忙しなく動き、学校へ行く用意を急ぐ。
最近3年目にしてようやく自分に馴染んできたように感じる高等部の制服に着替え、ロングの染めていない黒髪にカールをつけた。
ドレッサーの上の、小さく可愛らしいアンティーク調の時計を見ると、コウくんに送って行って貰うにはちょうど良い時間になっていて。
「コウくんー?用意出来たよー」
コウくんの部屋のドアをノックすると、仕立ての良さそうなシャツに着替えたコウくんが出て来た。
着替えてはいるけれど、やっぱり髪の毛はセットしていなくて。出張帰りなのにもしかしたら無理をしているんじゃないかな、と不安になる。
「コウくんやっぱり疲れてるよね。私、自分で学校行けるよ?」
「いいよ、時差ボケで眠れないし。この時間だと電車もバスも混んでるだろ?吉野も疲れてるだろうし」
吉野さんとは、コウくんや時々私を送って行ってくれる運転手さん。確かにコウくんが帰って来たのが深夜なら、吉野さんが帰って来たのも深夜。頼むのは申し訳ない気がする。
そう思っているうちにコウくんは、私の手を掴んで階段を降りて。
玄関に行くと、コウくんは前にフランスで買ってきた、繊細で豪奢なデザインの金色のお皿から鍵を取って。私はその横で、学校指定のローファーを履いた。
「朝子さん、行ってきます」
「行ってらっしゃい。光綺様も行ってらっしゃいませ」
いつものように朝子さんに挨拶をしてから玄関を出て、綺麗に咲いているマーガレットのガーデニングを見つつ、コウくんの車の助手席に乗り込んだ。
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