王子様は私を拾った

第2話





「おはよう、紫花(しいか)」


「おはよう、コウくん。おかえりなさい」


「ただいま、よく寝てたな」


「なんだか昨日眠くて。疲れてない?」


「時差ボケで眠れないし、それに久しぶりだから、朝は一緒に食べたいだろ?」




昨日まで1週間ほど南米に出張だったコウくん。明るい色に艶めく美しい木目のダイニングテーブルを挟んで正面に座ると、久しぶりに感じる優しい表情で微笑んでくれる。



手にはいつもの朝と同じように、湯気の立つブラックコーヒーが入った、私とペアのマグカップを持っていて。




染めていない黒の髪はまだセットしていないらしく、さらりとした様子で、シンプルな部屋着のコウくんはやっぱりいつものように恰好よかった。




「コウくん、今日お仕事ゆっくりなの?」


「おー、出張の後だからな。今日夏季課外だろ?学校まで送ってってやるよ」


「本当に?じゃあいつもよりゆっくりしよ」


「遅かったら俺は寝るからな」




そこまで話したところで、タイミング良くとても美味しそうな、彩り豊かな朝食が運ばれてくる。




「朝子さん、ありがとう」


「どういたしまして。光綺様に送って行って頂けるように、早く食べなさいね」


「はい、いただきます」




いただきます、と私と同じように手を合わせてコウくんも食事を始めて。



一週間ぶりにコウくんと食べた朝食は、コウくんがいなかった一週間の朝食よりも何倍も幸せで美味しかった。

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