第86話

「見すぎ。」



「わ!そんなに見てた!?」



「穴があくかと思った。」



「そんなに…!」




苦笑は苦笑でも、全然話したことがなかった頃とは違う。



少し馬鹿にするような要素を含むような笑み。



それに、ほんの少しだけど冗談も言ってくれるようになった。




呉月くんは不器用だし、そんなに表情に出すわけではないけど。




少しずつ、感情を読み取れるようになってきたのは。




きっと、一緒に過ごす時間が増えてきたからで。



きっと、呉月くんも私に少しずつ打ち解けてきてくれているから。




自惚れかもしれないけど、それでもやっぱり期待してしまう。

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