第67話

「天武天皇の気持ち、分かるんだ。」




そう呟いて、ゆっくりと机に顔を伏せた。



いつも堂々としている背中は、いつもより小さく見える。




この和歌なら、私だって知ってる。この前、授業で習った。



万葉集でも、教科書に乗るくらい有名な和歌。




額田王の、あかねさす…、の和歌に答えたもの。




天武天皇(大海人皇子)の恋人だった額田王は、当時、天武天皇のもとを去って、兄の天智天皇の恋人となっていた。




それでも額田王が忘れられない天武天皇からの求婚を、額田王は、あかねさす…、の歌で酒の席で戯れる。




その歌の返歌として、天武天皇から額田王に贈られた歌。

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