第64話

静かに、私は呉月くんのほうに身体を向ける。



それでも呉月くんは、悲しげな微笑みを携えたまま、机に視線を落とすだけ。





「多分、好きって想いも伝わってなかった。…言葉にするの、苦手で。態度で、って思ってたけど…っ。」



「うん…っ。わかった、わかったから。ごめんね…っ、ありがと」





呉月くんが不器用なのは分かってる。




褒められても謙遜して、それ以上言われると照れて、冷たい態度をとってしまったり。



優しさを、言葉じゃなくて態度で示す人なんだ。



アンケートだって、手伝ってくれた。



あんなに、彼女さんのこと大切にしてたのに。皆知ってるのに。




そんな風に大切にされていた本人にだけ、その想いが伝わってなかったとか、切なすぎるよ。

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