第60話

明らかな、矛盾。


それを言及する余裕なんて、ない。




「橋本さんが言ったんじゃん。私のこと、見てよって。」



「言ったけど、…それは!」



「知ってる。気、遣ってくれたんだよな?」




ありがと、って呟く呉月くんがどうしようもなく愛しくて。


どうしようもなく切なくて。


なんだか、悔しくて。




目の縁を、熱が彩る。


薄暗いオレンジが滲んだ。




「え、橋本さん…!??」



「っ、ごめん!全然関係無いのにね…っ。鬱陶しいよね、ごめ…っ。」




ちょっと待って、と私は呉月くんにタイムをかける。



律儀に呉月くんは、そのままぴたっと止まってくれて。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る