第57話

一歩、エースが窓に、私に、近付く。



私を追い詰めるように、一歩一歩、歩を進める。



だから、来ないでって。




あの風景が、呉月くんの瞳に映ることのないように、そうっと横に移動する。



オレンジに染まった窓を背にする私と、オレンジを正面から浴びるエース。





「隠さなくて大丈夫。」



「っ、え…?」



「知ってるし、見えてるから。」




見えてるって言うのは。



きっと、下の校門の付近の風景で。



呉月くんの彼女さんを、あの正体不明の男性が車で迎えに来ている状況で。



頭を引き寄せたり、髪の毛を手で優しく弄ったり。



明らかに2人が、付き合っているのが分かる。



辛くない、訳がないじゃん。

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