第56話

「っ、え…?」




嘘だ、そんなはずない。



ぱちぱち、何度か、確かめるように瞬きをする。




さっきの風景を振り払うように、最後、少し長めに目を瞑る。



ぱっ、と目を開けても目の前に広がっていた風景は変わらなくて。



良すぎる視力が、憎たらしい。



だって私、すぐに態度に出ちゃうのに。


すぐそばに、呉月くんがいるのに。




固まってしまった私を、不思議に思ったのか。




「橋本さん、どうかした?」



「ううん、なんでもない!」




絶対に、窓の近くには行かせない。


見せられないもん、こんなの。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る