第52話

制服をハンガーにかけて、ベッドに横になる。



ギシ、とスプリングが反発する音がした。



明日、どんな顔して呉月くんに会えばいいんだろう。



会うって言うか、挨拶か。



いつもの、おはよう、っていう挨拶。



今日観たあの光景は、確実に呉月くんを苦しめるもので。




いつも完璧で、不器用で、彼女を思い出しては照れ笑いをするエース。私の好きな人。




好きな人の、悲しみで歪んだ顔なんて、見たくない。




絶対、表情に出さないようにしないと。



不器用なくせに人の変化に鋭いから、あの人は。




そう決めて、夕御飯を食べるために部屋を出た。

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