第36話

その瞬間、いきなり。




「志貴ー?何してるの?」




廊下の向こうのほうから聞こえてきたような、反響した声。



響いていても、凄く澄んだ綺麗な声だと解る。そう、女の人の声。




呉月くんを、名前で呼ぶような女の子、同い年の中にはいない。



と、言うことは必然的に彼女さんだと言うこと。




「あ、そこにいて!」




呉月くんは急いで、私の席から離れた自分の机からファイルを掴んで。




「それじゃ。」




一言残して、私の方に一瞬流し目しただけで、教室を立ち去った。

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