第37話

誰もいない廊下と、空っぽの教室は、空間に呉月くんの足音と、2人の声を反響させる。




「ごめん、忘れ物。それよりなんで2年の階にいんの?」



「3階から降りてきたの。まだ部活?」



「ん、そう。」



「じゃあ図書室で待ってる。迎えに来てくれるんでしょ?」



「もちろん」




反響した声を、空気を震わせて私の耳へと届かせる。




「なに忘れたの?」



「英語のプリント」



「大切じゃん!」



「うるさーい」




くすくすとした笑い声も。




「煩いとか言って。私のこと好きなくせに」



「別に好きじゃないし」



「うわー。素直じゃないな。」




幸せそうな雰囲気も。


聞いたことがない、照れたような声色も。




何もかも。全部、全部、私のもとへ。




その状況は、さっきの古文の時間に知った和歌を思い出させた。

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