第16話
「どうした?」
いきなりの私の行動に、何がなんだか分からないらしい呉月くんの声。
「こっち見ないで下さい。エース。」
「もうつっこまなくていいですか。」
「出来れば今はつっこんで欲しかった…!」
訪れた、静寂。
窓の外から聞こえる、野球部の掛け声。
…なんだか、余計顔上げづらくなったな。
「橋本さーん、」
「はい?」
「俺、帰ってもいいですかー。」
「え!」
まだアンケート終わってない!
咄嗟に顔を上げてしまう。
と、見えたのはいたずらっ子のような笑みを携えた、エース。
「引っかかった。」
静かに、ほんの少し嬉しそうに笑う呉月くん。
「ひどい!」
「単純。」
「そうだけど!」
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