携帯電話
携帯電話が大きくなり始めた
突然の成長期に戸惑ったが
見守るしかなかった
そのうち猫より大きくなって
携帯できなくなった
携帯電話は時折転がって
自ら充電器に突き刺さる
大きくなった分電気も食う
全くメールが来ない日も
冷蔵庫並に電気を使う
そのうち足が生えてきて
自ら歩き始めた
そして手が生えてきて
自ら操作し始めた
私はただ見守るしかなかった
大きくなり過ぎた携帯電話は
私の家に収まらなくなった
ショップに運んでみたが手遅れだった
仕方なく動物園に頼んでみたが
餌では育たないので断られた
もういいんですよ、と携帯電話が喋った
びっくりして見つめていると
彼は自ら電源ボタンを押した
がくんと膝を付き
ゆっくりと縮んでいく携帯電話
私は心を静かにして
そっと♯ボタンを撫でていた
四日後携帯電話は元よりも小さくなっていた
電源ボタンを押しても反応しない
私はそれをポケットに入れて
思いつくままに歩いた
ただただそうしたかったのだ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます