スーツ
スーツが独り立ちしてしまった
取り残された僕は途方に暮れて
とりあえずジャージを羽織った
世界はほとんど変わらずに見える
スーツの残した手紙は
僕の知らない言葉だった
追うべきか
外に出るとワンピースが歩いていた
「スーツを観ませんでしたか」
「たくさん見たけれど区別がつかないわ」
首元がひらひらと揺れる
あなたはどこへ行くんですか
私たちは一年で流行遅れなの
ワンピースはどこかへ行ってしまった
僕は大事なことに気が付いてしまった
心を家に忘れてきたのだ
体だけがさまよい続けて
命だけが世界を傷つけている
包む物はつまらない夜に向けて
風を閉ざして濡れている
家に帰ると洗濯機がくつろいでいた
「もう何も洗うものはないよ」
服が全てなくなっていた
最初からそんなものがあったのか
それももうわからない
眠りについた心を起こして
僕は冷蔵庫に入った
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます