第12話:晋平の隠された過去。
「お母さん、私、お買い物なんて初めてだから、楽しみです」
「天国にスーパーマーケットとかないわけ?」
「そんなものはありません・・・必要なものはみんな神様が出してください
ますから」
「あ、神様が人間界のスーパーから盗んで来ちゃってるのかもしれませんね」
「え〜それ泥棒じゃない・・・」
「あ〜出来の悪い神様は追放されちゃいますから・・・また次の神様が神様の
あとを継ぐだけです」
「なるほどね〜」
「あの、ところで恵理奈さん・・・晋平さんの過去のことってご存知ですか?」
「中学校の時の事件って?・・・なにがあったか私知りたいんです」
「あ〜そのこと?」
「なに?晋平からなにも聞いてないの?」
「私に話してもどうにもならないからって・・・話してくれなくて」
「そう・・・あのね、私がしゃべったってこと、あの子には内緒ね」
「実はあの子が好きだった幼馴染の子が川で溺れて亡くなっちゃったの」
「晋平が中学の時クラスの何人かで川にキャンプに行ったのね」
「そこで、お昼のかたずけが終わったあと晋平と彼女はふたりで川へ
泳ぎに降りて行ったの・・・」
「ふたりでキャーキャー騒ぎながら泳いでるうちに川の流れに乗って急に
激しい流れの場所にに入っちゃって、で一気に下流に流されちゃってね」
「晋平は彼女が溺れないよう体を持ち上げてたんだけど流れがあまりに
激しすぎて足が立たないからどんどん流されてそうこうしてるうちに
ふたりが離れ離れになって、それでも晋平のほうは必死で対岸へたどり
着いたみたいなんだけど・・・彼女のほうはね・・・」
「晋平はそのことで自分を責めちゃって、好きだった彼女を死なせたのは
自分だって・・・ご飯も食べずに毎日泣いて泣いて、ずいぶん落ち込んだの」
「まあ晋平にも責任はあるからね」
「そのことがトラウマになって晋平は誰も好きにならなくなって、誰とも
恋をしなくなっちゃったの・・・晋平はもう女の子を愛せないのよ・・・」
「今は少しは立ち直ったけど、それでも自分の悲しみを隠すために去勢貼って、
冗談やバカばっか言ってるけど、それは彼女を亡くしたことの反動・・・あの子は
無理してふざけてるだけ・・・カラ元気っての?」
「本当はあの子は素直で真面目な子なんだけどね〜彼女が亡くなって
あの子の人生は変わっちゃったのよ」
「あの子から少しでも悲しみを取り去ってやりたくて、なるべく家の中では
明るく振舞うようにしてるんだけどね」
「親子だからね、そのへん暗黙の了解で分かってるんだよ」
「リンでちゃん、あなたの力であの子が女の子を愛せる男子にしてやって」
「そんなことがあったんですね・・・晋平・・・晋ちゃん・・・ずっと悲しみ
を背負って生きてるんだ・・・可哀想・・・うう」
「あらら、リンデルちゃん泣いてるの?・・・晋平に同情しちゃった?」
「ごめんなさい・・・晋ちゃんが可哀想で・・・」
「まあね、リンデルちゃんの気持ち分かるよ・・・私もいっぱい泣いたから」
「お母さん・・・私頑張ります・・・更生とかじゃなくて・・・晋ちゃんが
、みんなを愛せるよう・・・私を愛せるような心に戻してみせます」
「リンデルちゃん・・・もしかして晋平に恋してる?」
「え?・・・行為は持ってますけど・・・私天使だし、いずれ天界へ帰る身です」
「人を好きになっちゃったら別れる時が辛くなるでしょ?」
「そう、そうかもね・・・でもいいんじゃない?・・・自分の心に素直になっても
誰かを好きになることって素敵なことだからね」
「じゃ〜リンデルちゃんのパンツ買って帰るか?」
「リンデルちゃんのパンツ買ってこいなんて・・・晋平のやつ」
「自分の母親の洗ったパンツをリンデルちゃんに仮にでも履かせたくないってのは
男の微妙な心理かもね・・・」
「私、晋平の好きなパンツのデザイン知ってるからね」
「お母さん・・・恥かしいです」
つづく。
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