第8話:リンデル、晋平の妹になる。

「あんた、どこでその子誘拐してきたの」


今度は恵理奈が言った。


「誘拐なんかしてないよ・・・いきなり俺の前に現れたんだよ」


「またバカなこと言って・・・あんたは小さい時から作り話しばかりして

私らを困らせてたでしょうが・・・」

「よりによって、いきなり現れたって・・・その子を連れ込んでどうしよう

ってのよ、淫行息子・・・誘拐に婦女暴行だよ」


「誘拐も暴行もしてないわ・・・俺もそこまで腐ってないからな」

「つうか、なこと言ってたら話がぜんぜん進まないだろ?・・・」

「どうでもいいことは後回しにして、とりあえず紹介しとくから」

「この子、天使のリンデル」


「は?・・・今、なんて言った?・・まさかのてんしって言った?」


「そうだよ正真正銘、天使なんだって」

「俺を女にモテるいい男にするために遠い空の彼方から降りて来たんだと」


「よろしくお願いします、リンデル・フェバリットです」

「晋平さんの言ったとおりですけど、一個だけ違うのは晋平をモテるいい男に

するために来たわけじゃありません」

「私、神様の使命を受けて出来損ないの晋平さんをまともな人間にするために

来たんです」


「出来の悪いから出来損ないに変わってるじゃん、リンデル?」


「さっきからリンデルって私のこと呼び捨て?・・・晋平」


「とにかく、この子は俺をりっぱな男にするために来たんだから、俺たちと

一緒に住まわせるからな」


「なに?そうなの?・・・しょうがないわね・・・でも晋平をちゃんと良識

ある男にしてくれるんなら私たちも協力するしかないわよね」


「お嬢ちゃん・・・ご家族はこのこと知ってるのかな?」


「ご家族って、アホか良平・・・天使だって言ってるだろ?」

「家族なんてそんなもんあるかよ」


「晋平・・・私、天界に帰ったらちゃんと家族いるよ」


「え?あ、そうなんだ・・・天使って神様が作ったのかと思ってた」


「ロリータちゃん、まじで天使?」


「ロリータじゃなくて天使だってば・・・良ちゃん」


「りょ、良ちゃん?」


良平はこんな若い可愛い子から良ちゃんって呼ばれてまんざらでもなかった。

鼻の下をビロ〜ンと伸ばした良平をジト目で睨む恵理奈だった。


「ま・・・まあいいんじゃねえか?」

「晋平の出来の悪いところを直してくれるんだろ、リンデルちゃんは」

「このまま行ったら良平の将来は反社か極道かホームレスがオチだからな」


「でもさ、もし晋平とこの子の言ってることを鵜呑みにしたとして、いきなり

うちに女の子がいたんじゃお隣さんやご近所さんがおかしいって思われるかも

しれないじゃない・・・」


恵理奈が言った。


この子をうちの養女ってことにして晋平の妹にすりゃ丸く収まんじゃねえか?」


「良ちゃん頭いいわ」


妙なところで意見が合う夫婦だった。


「なんでもいいわ・・・リンデルがここにいることさえできたらそれでいいんだ」

「よかったなリンデル・・・妹だってよ、俺の」


「まだ呼び捨てにしる・・・」


「名前なんてどうだっていいじゃん・・・おまえ呼ばわりしてるわけじゃないん

だから・・・それに自分の妹にちゃんとかさんづけするほうが不自然だろ」


「そうですけど・・・」


リンデルはいいかげんな良平によって勝手に養女にされ晋平の妹にされてしまった。


根っから単純な良平と恵理奈は快よくリンデルを受け入れた。

リンデルが天使だったことは良平と恵理奈にとって大して重要なことじゃない

みたいだね。

つうか、まだ天使だって信じてないかもしれないし・・・。


つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る