第3話「こおろぎなくいえ」その③

(一)書き出しまでの思考経路


題材「虫」に対して、実体験である玄関のこおろぎの死骸を想い浮かべた。目に入る所にあるのにしばらくそのまま落ちていた死骸。すぐ片付ければ良かったのだけど「他の家族は気づいてないのか?」と思いそのままにしてしまった。逆に「お前は気づいているのか?」と試されているような気もした。

これをお互いに確認出来ない程コミュニケーション不全に陥っているのだと思った。これをメインに据える事とする。


こおろぎを題材として、タイトル、流れを考える。「興梠」という字に「軒の高い立派な家」という意味がある事を知り「ちょっと厳し目の旧家」、そこで家族とコミュニケーション不全に陥っている「先輩」を設定。


「鳴く」と「泣く」のダブルミーニングにするためタイトルをひらがなとする。


オープニングの数行(ここの事なんて言うの?)を書き出す。


『テスト範囲の教科書とノートを持って』で主人公が学生である事を示す。


『初めて来た先輩の』で主人公に先輩がおり関係性の距離感を示す。


『家はとても大きく立派だった。軒は高くて深いし、それを支える柱も太い。』で「旧家=軒の高い立派な家」を示す。


 『口を開けて外観を見回していると』は主人公が庶民的階級にある事を示す。あと、ちょっとバカっぽいところも笑


『「古いだけよ」と、』で先輩の性別、家に対する否定的な気持ちを示す。


『先輩は小上がりにスリッパを揃えながら言った。』で客にスリッパをちゃんと出す家柄?である事を示す。


以降、このくらいのトーン、説明具合を維持する事に注意して書き始める。



「これ、言っちゃうのどうなんだろうね」

「いえ、丸焦げにして貰うくらいに思ってます、こおろぎ」


 それを聞いて部長はころころ笑った。

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