第3話  闇の木馬の終焉

田中は震える手でカメラを握りしめながら、燃え上がる街を歩き続けた。火柱はさらに勢いを増し、街全体を呑み込んでいく。黒い木馬は一匹また一匹と火柱を登り、天高く昇っては消えていく。田中はこの異常事態に終わりが来るのか、それとも世界は本当に滅びるのか、確信を持てないまま進んでいた。


街はまるで地獄のように燃え続け、炎に包まれた建物の中から、田中は一つの小さな祠を見つけた。祠は奇跡的に炎に包まれていなかった。何かに導かれるように、田中はその祠に近づいていった。


祠の前に立つと、不思議な力を感じた。田中は息をのみ、その扉をゆっくりと開けた。中には、古びた石碑が置かれていた。その石碑には、かすかに文字が刻まれている。田中はそれを必死に読み解こうとした。


「火柱が全ての地に現れし時、闇の木馬は封印を破り、世界に混沌をもたらす。しかし、木馬を再び封印する方法はただ一つ。木馬の登る火柱を全て消し去ること。火柱を消せば、木馬も消え去り、闇は再び封じられる。」


田中はその言葉を読み、決意を固めた。火柱を消せば、この異常事態を終わらせることができる。だが、街中で吹き上がる火柱をどうやって消すことができるのか、方法は不明だった。


その時、遠くで再び大きな轟音が鳴り響いた。田中が振り返ると、最も高く、最も巨大な火柱が天を突き破る勢いで噴き上がっていた。その火柱は他のどれよりも圧倒的で、その中を昇る木馬も他の木馬とは異なる異様な存在感を放っていた。


「これが最後の木馬か…」


田中はそう呟き、火柱の元へと向かった。街の中心部に立つその巨大な火柱は、まるで大地そのものが燃えているかのようだった。木馬はゆっくりと火柱を昇り続け、徐々に天に近づいていく。田中はカメラを構え、その瞬間を記録しようとした。


「どうすれば火柱を消せるんだ…?」


焦燥感に駆られながらも、田中は周囲を見渡した。すると、突然彼の目にある光景が飛び込んできた。それは、街の中央を流れる川だった。川の水は火の粉を受けながらも、まだ燃えていなかった。田中は閃いた。


「この川の水で、火柱を消せるかもしれない…!」


田中は急いで消防士たちに助けを求めた。彼らは半信半疑ながらも、火柱を消すために水を集める準備を始めた。川から大量の水を汲み、巨大な火柱へと放水し始める。だが、火柱はあまりにも強大で、水をかけても簡単には消えそうになかった。


「もっと水を!全ての力を使って火柱を消すんだ!」


田中は叫びながら、必死に放水を続けた。火柱は徐々にその勢いを弱め、木馬の姿が薄れていく。そしてついに、最も巨大な火柱が静かに消え去った。


火柱が消えると同時に、黒い木馬も消え去り、街の炎は次第に鎮まっていった。木馬の登る光景も消え、空気が冷たく澄んでいくのを田中は感じた。闇の木馬は封印されたのだ。


街は焼け野原と化し、破壊の爪痕が残されたが、最悪の事態は免れた。田中は疲れ果て、祠の前に座り込んだ。彼の目に映るのは、再び訪れた静けさと、荒廃した街の風景だった。


「木馬は消えた…でも、これで終わりなのか…?」


田中は最後にそう呟きながら、カメラをそっとしまった。闇の木馬が再び現れることがないように祈りつつ、田中は静かに街を後にした。


#### 物語は終わったが、木馬の伝説は再び語り継がれることになるだろう。

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闇の木馬が、火柱を登る 白鷺(楓賢) @bosanezaki92

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