第5話 預言者 The Prophet

異世界・アシャンティ

東の大陸エウレメディアの南部、エータエリア王国、カンパニオンム地方、

カーゾリネ市 預言者の墓内部


手を繋いだ5人は墓の内部へ転送された。

ドームの真ん中に預言者が眠る豪華な石棺はあった。

その右隣に預言者ライカンループスの等身大の石の彫刻が設置されていた。

彫刻はおそらく預言者の人間形態の時を模したもので、狼の耳以外は普通の人間に見えた。

石棺の左隣に石で出来たようなコンソールがあった。

その真ん中に大きなエメラルドがはめてあった。


5人が転送魔法で現れたと同時に墓の内部が一気に明るくなり、コンソールのエメラルドが光りだした。

光っているエメラルドは映像機器の役割を果たし、預言者ライカンループスの映像を映し出した。


「5人の選ばれし者よ、ようこそ、我が家へ。。てか我が墓へ。」


預言者の映像が陽気に話した。


「預言者の映像だわ。」


「本当だぜ。」


「なぜ笑顔なの?」


「やはり呆れるよ。」


「誰か説明してくれよ。」


映像の預言者の外見は若い、茶髪の白人男性だった。確かにあの漫画の人間形態時の外見のままだった。

映像がいきなりワーウルフに変身したが、そしてまたすぐに変身し、最終的に半分人間、半分狼の外見に落ち着いた。映像の男性が犬歯が大きく見える笑顔だった。


「堅苦しいしゃべり方は止め、止め。俺の名前は大沢紀夫、こんな獣と西洋人の併せ混ざった外見だが、歴とした日本人の造形師で2024の2月28日の水曜日に死亡した。享年38歳、独身だった。フジキ・スズオ先生の【世界破滅協奏曲】のキャラクターの一人、ライカンループスとなりこの世界に転生した。何故そのキャラクターになったのは心当たりがある。精密なフィギュアを作った直後に死んだことに起因がある思う。君たちが転生する103年前にこの地に着いた。」


映像がマシンガントークで話し出した。


「今日はこの世界で俺が死んで75年になる。俺は預言者で転生した君たち5人のすべてを知っているし、記憶魔法と映像魔法を併せて使って、このホログラムもどき魔法の映像記録を残した。あらかじめ君たち何を質問するのは知っているので遠慮なく聞いてくれ。」


「本当に知っているなの?」


「はい、流石このパーティーのリーダーでアタッカー。君は佐治・サチコのコスプレをしたコスプレイヤーの。。やはり本名などここで言わないでおこう、時になったら、全員、自分の口から本名を名乗ることになるだろう。」


「あたしはリーダーじゃないよ。」


「リーダーになる。そう決まっているよ。そのリーダーとしての真価が問われる出来事がこの大陸を離れる前に起こるよ。」


「随分と具体的だわ。」


「私たちが何故転生させられたの?」


「ヒーラーで援護射撃担当のハニー・バートリだね。理由は単純明快だよ。俺の予言だ。俺は転生してから遠い未来が見えるようになった。そしてその未来で君たちが転生し、魔王タローウンを倒す。」


「魔王タローウンって野郎はクソゲーのキャラかい?」


「このパーティーのタンクでファイターの竜一家の竜ノ助だね。ゲームのキャラクターが転生したのではなく、そのキャラクターに憧れてたクソ野郎が転生した。」


「その魔王の正体はぼくたちと同じ転生者?」


「君はバーサーカー・ユイナーだね。このパーティーのアタッカーの切り込み隊長。はい、同じ転生者で俺や君たち全員と一緒で闇を抱えていた男だった。決定的な違いはそいつは途轍もないエゴイストで自分勝手なゴミだな。」


「そいつの名前は教えてくれよ。」


「赤鬼の鬼切丸だね。君はもう一人のタンクでパーティー首脳陣の守り役。撤退の際、しんがりを務めることになるよ。正直に言うけど名前が見えなかった。魔王の正体や名前だが、あまりにもどす黒いオーラと悪意の塊のような存在しか見えなかった。」


「それであたしたちは何をすればいいの?」


「この国の北にあるアルロペス山脈を越えて、国境を越えて、自由貿易都市、モーゲワへ行く必要がある。そこに陣取っている魔王の手下を滅ぼせ。」


「魔王の手下?この大陸にもいるの?」


「はい、いる。この城塞都市でもいるさ。但しモーゲワの悪の方が巨大。」


「ここの魔王の手下はぼくたちを監視しているの?」


「攻撃を仕掛けるさ。すぐに負けるけど。そいつの名前はカーワンチョースだ。警備兵に扮しているドッペルゲンガー型悪魔だ。」


「どうやってその野郎を見分けられるか?」


「ここを出たら、すぐに目線を上に向ければ、わかるさ。」


「それはわかったけど自由都市でどんな悪が俺たちを待っているのか?」


「自由都市の市長兼財務大臣、マルシン・ビスカーランだ。本物は5年前に食われて、悪魔はそいつの皮をかぶっている。食われた本人もくそ野郎だったがね。」


「私たちに詳細を教えられないの?」


「大筋を教えるだけだよ、君たちは優秀だよ。自分たちの感覚と感を信じればいい。」


「それを言われても、ぼくは信じないよ。」


「信じるようになるさ、君たちの本当の才能はこの世界で開花するよ。」


「そんな簡単に物事が進むわけないわ。」


「確かに簡単に進まんよ。この大陸の大型転送魔法陣に着く前、本来生まれるはずのない命を助けなければならないことになる。」


「どういうことか?預言者さんよ。」


「旅路の途中でわかるさ。」


「それで俺たちのこれからの旅は長いのか?」


「長いさ、大型転送魔方陣のあるジェルメイン共和国にたどり着くまで5か月はかかるよ。明日出発になるだろうけど。」


「あたしたちや魔王以外の転生者がいるの?」


「過去には居たさ、そしてこれからその過去の転生者と会うことになる。」


「仲間が増えるってか?」


「仲間にはならないが、旅路の援助はしてくれる。魔王を倒す使命を背負うのは君たちだけだよ。」


「なぜ私たちなの?」


「それはわからない。女神の意図ではないのは確かだけど。それ以外の大きな存在の意図だと思う。」


「この姿で転生した理由はわかるのか?知っているなら教えてくれ。」


「好きだったキャラクターに転生した理由がわからない。俺もそうだった。今囚われているペイルン共和国のスケルトンの英雄もそうだ。そして君たちがフェロンセ帝国で出会う活動停止中のゴーレムも。」


「現地人の援助は期待できるの?」


「できるさ、ある程度はね。俺の孫をサポート役として連れて行ってくれ。但し海を渡らせるな、アメディア大陸に渡ったら、死ぬことになる。この大陸の各国の軍隊も全面的にサポートしてくれることになるだろう。」


「ぼくたちをここへ連れてきたあのカッコイイ司令官だね。」


「はい。孫はこの大陸のサポート役になる。大陸移動できたら別のサポート役が現れるよ。」


「この大陸を早く抜ける転送魔方陣ないの?」


「大型のはない、小型の距離が短く、時間は大して変わらないので陸路での移動をした方がいい。」


「俺らはキャラクターの能力は使えるかい?」


「はい。使えるさ、そして新しい能力も開花できるよ。その時が来れば、俺は知らせよ。」


「どうやって知らせるというの?」


「個人専用の預言書を渡す。必要になったら、アラーム音がなるように設定した、便利になるアイテムさ。」


床にあった隠し扉が開き、緑色に輝く本、5冊が各メンバーのところへ飛んで行った。全員はそれを手で取った。


「あたしたちには個別の預言があるのは気になる。」


「知る必要になった際、アラームが鳴る。ここの文字が読めるのは本人のみに設定したよ。紛失しても自動的に複製が現れるし、紛失したものが消える。」


「便利だな、確かにそう思うの。」


「これからモーゲワまでの道に関する詳細を説明するけどいい?全員はちゃんと聞いてくれよな。魔王討伐の第一歩となる。」


「はい!!」


5人は一斉に返答した。




自由貿易都市モーゲワ

市庁舎


マルシン・ビスカーラン市長は儀式用のポティールに先ほど殺した人間の子どもの血を注いだ後、ゆっくりと飲んだ。


「ゴリーティだ。返事しろ。」


突然、頭の中で声が響いた。


「ゴリーティ将軍、ビスカーランです。」


「5人の戦士がお前のいる町へと向かう。公開された予言でそうなっている。そこで足止めをしろ。勝つことは期待しとらんが、せめて一人か二人ぐらいは殺せるだろうな。」


「もちろんですとも、ゴリーティ将軍。」


「魔王タローウンはお前の働きを期待しているぞ。」


「魔王陛下の栄光のために、この私めが一生懸命働きます!!」


ゴリーティ将軍の回線はすぐに切れて、市長はまた血を飲み始めた。


召喚された悪魔である彼には本来食事が不要だったものの、召喚された者は残虐性のある性格のため、そして快感を得るため、人間、亜人、魔族を影で食べていた。特に子どもの血肉が好んで食していた。


「偉そうに命令するなよ。三流悪魔のくせに将軍を名乗りやがって。」


ゴリーティ将軍に対して軽蔑な感情でマルシン・ビスカーラン市長の皮をかぶった悪魔が呟いた後、ポティールの血を飲み干した。




次回:攻撃と出発

日本未修正







































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