第6話 攻撃と出発 Attack and departure
異世界・アシャンティ
東の大陸エウレメディアの南部、エータエリア王国、カンパニオンム地方、
カーゾリネ市 預言者の墓内部
5人はずっと預言者の映像と話した。
映像記録であることをさえ忘れさせるように流暢に話、質問に対してすぐに回答していた。
「本当に映像記録魔法なの?」
「はい、君たちとの会話をすべて予言で見たのであらかじめ回答を録画したよ。」
「お前さん、なぜ死んだのか?」
「いい質問だね。悪の転生者と戦って死んだよ。それも予言で見たし、逃げること、回避することも可能だが、一度そうする、運命が追いかけてくる。」
「運命が追いかけるの?」
「はい、追いかけられている間、要らぬ被害も増えるし、他者の運命も狂わせる。」
全員は予言者の回答に納得した。
「ここを出ていく前、君たち全員に指輪を渡したい。どこへ行っても、相談が必要な時にここへ戻れるように。但し回数制限と時間制限がある。1日3回まで、一人は1回、1回で戻れる時間が20分のみ。」
「ぼくたちはかなり制限かけられているね。」
「ああ、俺たちの運命は既に決まっているように思えるな。」
「安心してください。運命は大まかに決まっているが、最後の最後で君たちの各自の決断は重要だ。」
「でも魔王を倒さなきゃならないでしょう?」
「その通り、ハニーさん、でないとこの世界が滅ぶ。」
「運命に囚われているみたいになんか嫌だわ。」
「運命に囚われていても、最終的に君たちが運命に勝つさ。今それしか言えない。」
「わけわからねえよ。。でも確かにあの魔王野郎を野放しに出来ねえな。」
「君たちにこの世界の命運がかかっているよ。プレッシャーだが、君たちがなら負けない。」
「確かにね、俺たちは元の世界に未練がないからな。」
「ああ、ぼくたちはあの世界で異質だったし。」
「死ぬ運命だった私にはこれは生まれ変わりなの。」
「ああ、あたしたちの人生はここ再スタートするね。」
「もう一人ではねえぜ、お前たちが仲間だ。」
「忘れるなよ、ここを出たら、必ず上を見て、敵が見えてくるよ。5人の異形の戦士に栄光あれ!!」
記録映像が消えた。5人はまた手を繋ぎ、先ほどの【呪文】を唱えて、墓の内部から外へ転送した。
カーゾリネ市
預言者の墓の外
ドッペルゲンガー型悪魔は警備兵に扮して、警備隊の列に戻った。
カーワンチョースは元々警備兵の苗字だった。下位の悪魔は名前を持たず、魔王や上位の悪魔に召喚され、与えられた命令を実行するだけの存在。
この警備兵が悪魔に殺され、肉体が食べられ、ドッペルゲンガーの能力で記憶まで複製された。誰も本物のカーワンチョース伍長が悪魔に代わったことが気づかなかった。その伍長自体がかなりの悪人だったので親しい人がほぼいなかったのもある。
下位の悪魔は負のオーラ、薄黒いオーラを持つ人間、亜人や魔族に成り代わることができる。工作員として動いている悪魔が三つのタイプに分かれていた。
一つ目は悪霊型悪魔であり、このタイプは対象者に憑依し、精神と魂を食い殺し、肉体を操る。精神と魂を食い殺しているので肉体はゆっくりと腐っていくので短期の任務でよく召喚される。悪霊型のもう一つの利点は無垢な者でも憑依ができるのでテロ攻撃によく使われていた。
寄生型悪魔は対象者の中に入り、肉体、内臓や脳を食らい、皮をかぶる。脳を食らう時に記憶を得るので長期的任務に召喚され、数百名は各地に潜伏していた。
対象者の皮をかぶっているため、悪魔払いの結界や悪魔探知魔法をかいくぐることができるので重要人物に成りすますことが多い。
ドッペルゲンガー型は対象者を完全に複製することが可能で、寄生型同様、悪人に成り代わることが多い。複製された対象者は捕食され、何も残らなくなる。
悪魔払いの結界は突破できないため、このタイプは戦場から遠く離れた、比較的平和な地域で活動することが多い。
カーワンチョースはドームの前に立っていたので5人の戦士が転送魔法で再び墓の外に出た時に素早く背中から蠅の羽と蠍の尻尾を生やし、上へ高く飛んだ後、5人目掛けに急速落下し始めた。
警備兵や民衆が混乱し、数百名は悲鳴を上げた。
「魔王タローウン万歳!!!」
カーワンチョースは叫びながら特攻攻撃してきた。
言い終えたところで地上からジャンプした竜ノ助の拳は顔にヒットし、人間の顔の擬態が消えた。カーワンチョースは再び上へ飛ばされた。
「なぜだ!!!」
「てめえが攻撃しかけてくるのは知ってったぜ。」
飛ばされたカーワンチョースの後ろに近距離魔法で現れた鬼切丸が彼の羽を一撃で切った後、背中に蹴りを入れ、落下させた。
「俺たちの歓迎を受けるがいい、魔王の手下め。」
落ちていったカーワンチョースを待っていたのは斬馬刀をバットのように構えていたユイナーだった。
「やめろおお!!!」
ユイナーは思い切り斬馬刀をふり、カーワンチョースの体を真っ二つに切って、ドームの壁に叩きつけた。
「汚いボールだよ。」
2つにされた悪魔の体がドームの壁にぶつかり、下へスルスルと落ち始めた。
ハニー・バートリは銃を抜き、連射を始めた。撃った弾丸は対悪魔弾でそれ以外の物や人に対して傷付かない代物だった。そんな弾丸で攻撃されたカーワンチョースは更に細かい肉片へ変わった。
「悪魔め、滅びろのよ!!」
地面に落ちたカーワンチョースの肉片が再生始めようとしたが、佐治・サチコはその前に立った。
「地獄に帰らせてあげるよ。二度と戻るな、ゴミ。」
口も声もないカーワンチョースは恐怖で無言の断末魔を上げた。
「特別製の焙烙火矢だよ、燃え尽きるがいい。」
サチコが投げられた火のついた球が限定的な爆発を起こし、細かい肉片まで燃えつくした。
すべての出来事を間近で見た警備兵と民衆から5人の戦士が一斉に喝さいされた。
ライカン・ノリヒト司令官は走りながら近づいた。
「俺の部下が悪魔だったなんて。5人の戦士様、まことに申し訳ございません。」
「気にしないでよ、あたしたちは中で預言者に初めて聞かされたの。」
「それでも皆様に危険と多大な迷惑をかけました。」
「私たちは大丈夫だったので気にしないで。」
「それよりお前さんは準備できているか?」
「俺たちはこれからこの国を出て、モーゲワへ向かうよ。」
「君はぼくたちと一緒に来るんだよね。」
「はい、ユイナー様、皆様、俺だけの予言だと聞かされていた。準備はできている。」
「では明日の朝に出発しましょう。あたしたちの魔王討伐の旅がこれから始まるのさ。」
自由貿易都市モーゲワ
市長宅
コミケ転生者より5年前
中年になりかかったマルシン・ビスカーラン市長は同性の愛人とことを及んでいた。
愛人は最近この町に住み着いた若い異人で、西の大陸エイシェニアの顔立ちだった。
市長は同性も異性も好きだったのでたまたま今夜同性の彼を呼んだ。
愛人は黒髪のハンサムで無口な男だった。たまにもう一人の愛人である女性も交えて、3人でことを及んでいたこともあった。
「もっと、もっと激しく、頼む。」
市長が枕を噛みながら愛人にお願いした。愛人は機械的、そして激しく動き始めた。
愛人の男が自分の中に果たせたかと思ったが、素早く体の一部を市長から出し抜いて、いきなり腰に付いてた手からも力を抜けることを感じた。
「おい、どうした?大丈夫か?」
愛人のことが気になり、市長は頭を後ろへ振り向いた。
愛人だった人の体がベッドの上で後ろに倒れていた。
目がなく、眼窩は空っぽの穴になり、体は骨と皮になっていた。
「ええ!!なんだこりゃああ!!」
市長が悲鳴を上げたが、気づくと声がまったく出なかった。
直腸から何か体の中へ上ってくるのは感じた。
「なんだ、なんだ。。。やめろおお」
声を上げてるつもりでも声がまったく出なかった。
中から何者か自分を食べているのは感じた。想像を絶する痛みを感じながら声を上げることもできなかった。
ベッドの上でもがき苦しみながら本物のマルシン・ビスカーランが5分後に死んだ。
目が眼窩の中へ引きこまれたが、すぐにまた新しい目が中から生えた。
「ゴリーティ将軍、マルシン・ビスカーラン市長の体を乗っ取ることに成功しました。」
市長が立ち上がり、念話でメッセージを送った。
「わかった。これより魔王陛下のため、この大陸の情報を定期的に報告しろ。今日からお前はビスカーランだ。」
「承知いたしました、ゴリーティ将軍。」
回線が切れた後、市長の口からワームのような赤黒いものを吐き出した。
「わが分身体よ、その空っぽとなった男の体に入れ。」
吐き出されたワームが愛人だった男の体に口から入り、すぐに体が生気を取り戻し、笑顔を浮かべた。
「本体よ、もう一人の愛人、あの女性を呼びますか?」
「そうだね、分身体。今すぐ呼びに行ってこい。」
「はい、すぐに行きます、本体よ。」
愛人が着替えて、市長の寝室から急ぎ足で出ていった。
マルシン・ビスカーラン市長の体を乗っ取った寄生型悪魔がトイレへと向かった。
口からもう一人の女性愛人に入る予定の分身体を出した後、消化しきれなかった本物の市長の内臓を便座に吐いた。
次回:道中
日本未修正
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