第4話 預言者の墓 The Prophet's Tomb

異世界・アシャンティ

東の大陸エウレメディアの南部、エータエリア王国、カンパニオンム地方、

カーゾリネ市


魔王タローウンが容赦なく全生物の蹂躙を決行している地域から遠く離れた東の大陸のエータエリア王国は比較的平和だった。

滅ぼされたペイルン共和国の旧首都でアメディアの東海岸に位置しているレイマン市の港町周辺を除いて、ほぼ全域が魔王領となった中央大陸アメディアから多数の辛うじて生き残った難民がエウレメディア全土に押し寄せていたが、主に産業革命の影響で工業地帯と化した大陸北西部の豊なシュベイン王国、フェロンセ帝国、ジェルメイン共和国、アングレッシュ王国連合国、ソイズエ公国に集中していた。

亡国となったペイルン共和国の旧首都は対魔王戦の最前線であり、西の大陸エイシェニアの国家連合と東の大陸国家連合の援軍と物資が絶え間なく届けられていた。

レイマン市の女性市長、スザエヌ・ヴィヤラーン、彼女の右腕で将軍のドミングス・ペイラスが英雄と崇められていた。

ペイルン共和国には異世界から50年前に転生してきた英雄と称えられていた不死者のスケルトン戦士がいたものの、10年前、魔王軍の電撃的な攻撃でペイルン国軍と共に滅ぼされた。

レイマン市に大陸間の巨大な海を一瞬で大量転送できる大型魔法陣があり、世界各国がそれを守るため、絶え間なく援助していた。

【ダーク・ヒストリー・ワールド】の無敵魔王の設定の中で唯一と言える弱点らしいものは大海を船で渡れない、その設定制限は魔法陣使用時のみはその限りでないことだった。そのため、魔王は大量転送できる魔法陣が欲しがっていた。


「思ったより深刻な状況だわ。」


「そうだね、私もそう思った。」


「俺らは本当に救世主になれるんかいな。」


「ぼくたちはまず、ここに眠る預言者の墓を訪れる必要があるよ。」


「確かに、俺たちは己の運命を知るためにな。」


5人はカーゾリネ城壁都市入り口である正門に着いた。


この世界には様々な人類、亜人、魔族が生活していたので5人は特別に目立つことはなかった。

エータエリア王国の全身ミスリルの鎧を着た警備兵の一団が入口に立ち、道を塞いでいた。軍指揮官の制服を着た一人の金髪で小麦色の肌をした若い男性が5人の前に出た。


「予言の5人の戦士様でございますね?私はここの軍の司令官であり、預言者ライカンループスの孫である、ライカン・ノリヒトです。長い間、お待ちしておりました。」


司令官がやや大袈裟に挨拶した。


「あたしたちは女神アシュタルの力により転生した異世界の人間です。」


「存じておりますとも、佐治・サチコ様、予言通り、今日は皆さまが来ましたので、早速、偉大な予言者であった祖父の墓へご案内いたします。」


「そんな突然来た5人を信じていいの?私なら一度疑うよ。」


「この出来事は既に100年前に予言されていましたのでご安心を、ハニー・バートリ様。」


「お前さんは俺らのことを知っているってかい?」


「はい、その通りでございます、竜ノ助様。」


「ぼくたちの目的も知っているのね。」


「はい、もちろんですとも、ユイナー様。」


「俺たちのことはすべてお見通しかな?」


「開示された予言のみに限りますが、鬼切丸様。」


ライカン・ノリヒト司令官が5人を市内に入場させた。


「門を開けよ、予言された5人の救世主様のご入場である!!」


城壁都市の巨大な門が開いた。

目の前にあった大通りに7万8千人の住民総出で5人を待っていた。。


「5人の救世主様、万歳、万歳、万歳!!!」


5人は大通りでパレード行列進行を行い、両側にカーゾリネ市民の声援が届けられていた。


「こんな大事になるとは思わなかったわ。」


「恥ずかしいよ、私。」


「ぼくは水着アーマーだよ。こちらの方が恥ずかしい。」


「いいぜ、いいぜ、手を振ろうぜ!!」


「この鬼の姿で投げキスもらえるとは信じられない。」


しばらく大通りでパレード形式で進行したが、大きなドーム型の建物に着いた。


ドーム型の建物の前に巨大な黒い慰霊碑に白いこの世界の文字で書かれていた。


【偉大な予言者、ライカンループスはここに眠る】


不思議と5人はその文字を読むことが出来た、おそらく女神のご加護によるものだと全員思った。そして同じく慰霊碑の真ん中に日本語の文字があった。


【大沢紀夫、別名ライカンループスはここに眠る】


「日本語だわ。」


全員が釘付けになった。


【五人の転生者諸君、ドームの前に立ち、手を繋いで、一二の三で一斉に大きく唱えよ、アベン〇ャーズ・アッセンブルを】


「映画のパクリじゃねえか。」


「何ですか、私が感じているこの脱力感。」


「ぼく呆れたよ。」


「でもセンスあるよな。」


ライカン・ノリヒトは後ろから声をかけた。


「私たち異世界文字を読めないので皆様に言えるのは一斉に書かれている呪文を唱えて、預言により封鎖されている墓の内部へ転送していただきたい。救世主となる5人の皆様にのみ、開示される預言があります。」


「わかったわ。ありがとう司令官。」


全市民の声援を受けながら、封鎖されたドーム型の建物の前に5人が立った。


「私たちは本当にやるの?」


「やらないとダメみたいだわ。」


「ぼく、マジで恥ずかしいよ。」


「やろうぜ!!」


「この予言者、ツボるんだよね。」


5人はドームの前で手を繋いだ。


「アベン〇ャーズ・アッセンブル!!」


5人は瞬時に墓の中へ転送された。




一人の警備兵が大通りから離れて、人気のない路地裏に入った。

彼は魔王の命令で数年前からこの国に潜伏していた召喚されたドッペルゲンガー型悪魔で直属の上官へメッセージ送った。


「ゴリーティ将軍、異形の戦士が預言者の墓に入った。」


「随時報告を忘れるな、カーワンチョースよ。」


魔王領となった亡国ホリバル王国の元首都、ケイラカス市の瓦礫の上に座っていた赤い肌の黒い1本角の禿げた悪魔であるゴリーティ将軍は返答した。


「攻撃仕掛けますか?」


「開示されてない予言の内容がわかれば、攻撃しろ。」


「承知いたしました。」


「タローウン様にお前の献身的な働きを報告するぞ。」


「ありがとうございます、ゴリーティ将軍。」


ゴリーティ将軍はメッセージ回線を切った。


「使い捨ての雑魚が。。誰かてめえなんか称えるのかよ。」


瓦礫に唾を吐いた後、意地悪そうで醜い笑顔を浮かべながら、先ほど調達した亜人の女児の死体を食い始めた。



次回:預言者

日本語未修正


























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