第3話 魔王 The Evil Lord
2021年(令和3年)8月31日(火)
午後22時30分頃
コロナウイルス・パンデミック最中
山門太郎は実況プレイの準備に入った。
自分のチャンネル登録者数は非常に少なかったが、彼は気にしていなかった。
マニアックなゲームの実況だったため、少数で満足していた。
太郎は35歳の引きこもりニートだった。学校でひどいいじめに遭い、17歳で高校を中退し、部屋に引きこもった。
18年も引きこもった影響で親や兄妹は彼のことを諦めて、触らぬ神に祟りなしのごとく、必要最小限の接触しかしてこなかった。彼にはこの対応は幸運であり、不幸でもあった。時折自慢したかったものの、家族にゲーム実況の話ができなかった。
「今夜は最強伝説のクソゲーを実況するぞ!!」
彼の手にあったのは【ダーク・ヒストリー・ワールド】のソフトだった。
2019年4月30日の火曜日に今倒産したスレイド・ゲームズ社の某有名ゲーム機専用に発売された素晴らしいの一言に尽きる出来栄えのグラフィックスが売れ文句だったが、敵キャラだった【魔王】を誰も攻略できず、僅か3か月で発売中止となった伝説的ゲームだった。
太郎は肥満体だった。彼は160センチの身長で125キロの体重で、その原因は主食である高カロリーのスナック菓子とコーラに起因していた。
時々母親がドアの前に置く食事も食べていたが、父親が毎週渡す4万円で夜中にコンビニへ行き、スナック菓子を大量に購入していた。
パソコンチェアに座って、配信準備の最中に胸の痛みや圧迫感に襲われた。今まで肥満でも比較的健康体と思い込んでいた彼の体が限界だった。
「治まれよ。。嫌だ、このまま死にたくない。」
胸に手を当て、つぶやいた。
「嫌だ、こんなのは嫌だ。」
更に痛みが増し、視界が危うくなった。
「俺はゲームの無敵の魔王のような男だ。こんなところで死んでたまるか。」
胸が更に圧迫感され、痛みが強烈になった。
「嫌だ、まだ何も達成してないのにくたばるのは嫌だ。俺は死なない、家族や世間に俺のすごさを証明してないぞ。」
汗が滝のように流れ出した。
「俺はタローウン、マニアックゲーム実況の魔王、タローウンだ。。。俺は死なん。」
左手に持ってたソフトをおぼろげに見た。
「俺は魔王だ、俺はいつも世間から虐げられていた者だ。俺はのほほんと生きているめでたい奴らが憎いぞ、そいつらより俺は幸せになれるはずだったのに。。。この理不尽な世間、世界、俺以外の幸せそうにしているすべての生命が憎い。。。」
それをつぶやいた直後、壮絶な痛みを感じながら山門太郎が死んだ、享年35歳。
彼の体は死亡してから2日後、部屋からくる強烈な臭いに気づいた彼の両親によって発見された。遺体の右手は凄まじい力で胸に食い込んでいて、左手に【ダーク・ヒストリー・ワールド】のソフトが同じく凄まじい力で潰されていた。
異世界・アシャンティ
中央大陸アメディアの南、エリンジャーの森
コミケ参加者転生より10年前
太郎は森の中で目覚めた。
夕日が沈むごろで空がまだ明るく、気温は涼しかった。
「ここはどこだ?」
日本ではなっかたのはなんとなくわかったが、居場所を特定できなかった。
彼は自分の手を見た、赤身のかかった肌、力強い手、赤身爪。
目覚めたところの近くに沼があったので水に映る自分の姿を見た。
「魔王だ。まさか俺は魔王に転生したぞ!!」
水に映ったのは身長2メートル以上の筋肉質な鮮麗された顔のイケメンな男性。赤い肌、赤い髪、赤い目、濃い深紅に近い二つの大きな山羊の角、大きな白い犬歯4本、黒いスーツのような服、黒いシャツ、黒いブーツ、赤いネクタイ、そして深紅のローブを着ていた。
「俺は魔王だ!!」
狂気を感じられる歓喜の叫び声を上げた。
太郎は何度も攻略を挑んでいたキャラに自分自身がなったのは嬉しかった。
魔王のすべての能力(スキル)、魔法など頭の中にインプットしていた。
「眷属召喚・偵察用悪魔!!」
太郎は唱えた。
2体の赤い悪魔たちが現れた。1体目は若い男性の姿で黒い鎧と赤い肌、黒い髪と全体が黒い目、蝙蝠の黒い翼をしていた。2体目は若い女性の姿で赤い肌、黒い髪と赤い目、露出の多い黒いビキニアーマーを着ていた、男性同様、背中に蝙蝠の翼だった。2体は禍々しいオーラを放つ大剣を装備していた。
「魔王様、偵察悪魔シグリッド兄妹、御身の前に。」
2体は太郎の前に同時に挨拶し、同時に跪いた。
「近辺を調べてこい、近くに町があるかどうか、知りたい。」
「仰せのままに、魔王様。」
2体同時に答えた。
「それとシグリッド兄妹よ、俺を魔王タローウン、タローウンと呼べ。」
「仰せのままに、魔王タローウン様。」
2体は素早く、探索のため、すぐにその場を離れた。
約30分後、2体が戻ってきた。
「タローウン様、森の南に7000千人の人間と亜人の町がある。名前はアリーカンです。」
女性型の悪魔が報告した。
「タローウン様、この地方をタークナンと呼ばれていて、アリーカンが最果ての町です。住民以外地方領主の1個中隊、250人の兵が駐屯している。」
男性型が報告した。
「人間と亜人か?幸せそうにしていたか?」
「タローウン様、はい。秋の祭りの準備中でして、町長以外、地方領主の代理人も滞在している。」
女性型が更に付け加えた。
「タローウン様、祭りの期間中に警備が薄くなっている。」
男性型も付け加えた。
「祭りか?そういえば、俺は祭りが大嫌いだったな。そのふざけた町の住民はみな殺しにするぞ。」
「仰せのままに、タローウン様。」
2体は同時に答えた。
「眷属召喚・悪魔軍小隊!!」
30体の3メートルの屈強な男性の戦士型悪魔が現れた。
全員は黒い全身鎧と禍々しいオーラを放つ戦斧、槍、大剣などを装備していた。
「魔王様、悪魔軍・チェアベス小隊、御身の前に。」
全員は魔王の前に跪いた。
「俺を魔王タローウン、タローウンと呼べ。それからアリーカンの町にいるすべての生き物を蹂躙するぞ!!」
「仰せのままに、タローウン様。」
30体の戦士型悪魔と2体の偵察悪魔が同時に返答した。
異世界・アシャンティ
東の大陸エウレメディアの南部、エータエリア王国、カンパニオンム地方、ナポーリゼ市近辺
現在
女神アシュタルの力により、5人が転移魔法でこの地に到着した。
先ほどまで女神から魔王タローウンの数々の蛮行や非人道的行為を聞かされていた。
彼らは女神に魔王が自分たちの世界のゲームのキャラクターであることも細かく説明をした。案外と女神はすぐにゲームの概念を理解し、興味津々に聞いた。
予言によると5人はまず、預言者が眠る地を訪れる必要があった。
「貴殿らは比類なき力、正義の心、深い慈悲の心を持つのは存じているが、我の加護も授ける。」
全員、女神アシュタルの力を与えられた。
「貴殿らは預言者の眠る地を訪れ、ご自分の運命と役割を知る必要がある。」
女神アシュタルは彼らにそう言い、転送魔法で天界からこの世界に送った。
「預言者はどんな野郎だったのかな、気になるぜ。」
「私は個人的に各自専用の予言もあるのは気になるのよ。」
「あたしもそう思う。そして預言者はどんな人物だったか、何故100年前に転生したか、知りたいわ。」
「ぼくたちの運命は決まっているってことだよね、なんか嫌だなと思いながら、気になるし。」
「あまり嬉しくないが、俺たちは元の世界へ帰れるヒントがあるかも知れない。」
「帰りたいと思うの?」
ハニー・バートリは全員に聞いた。
「あたしは帰りたいと思わないわ。末期の乳がんだったし。」
「俺は施設育ちの天涯孤独もんよ、戻らなくてもいいぜ。」
「ぼくは男の娘の活動がバレてから罵倒と絶縁されたし。」
「俺なんか、腫れ物扱いされるのはしんどいし、お金や援助をもらっても、いつも心が空っぽだよ。」
「私は悲惨な目にあって、唯一だった夢のコミケ参加が終われば、自殺を考えていたよ。」
転生した5人は暗い過去を背負っていた。
「まずは預言者ライカンループスはどんな男だった、いつ来たのか、調べてみましょう。」
佐治・サチコは笑顔を作り、皆に伝えた。
全員はナポーラン地方の県都ナポーリゼ市の近くにあるカーゾリネ市へと向かった。
次回:預言者の墓
日本語未修正
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます