第18話 いい感じの二人⑴

「みんな、文化祭お疲れ様!最優秀賞を取れたおかげで、私は職員室でももてはやされまくりです!モテまくりたいってのが本音だけど…、とにかく!来月からの修学旅行に向けて、班決め、部屋決めをしていきます!」

 悲しい本音だ。あぁ、なるほど。もうそんな時期か。というか、それより…。

「陽菜。一緒の班にならないか?」

「いいわよ。じゃ、他にもメンバー集めよっか」

「おう」

 春宮を挟んだ隣の席で、西川と那月が親しげに話している。てか、陽菜って名前で呼んでるし…。

「春宮、二人…」

「ん、ただならぬ気配…」

「そんな悪霊みたいに…」

「誰が悪霊だ」

 俺と春宮は、ビクンと肩を揺らして振り返る。そこには、不機嫌そうにしている西川と、笑いを堪えるので大変そうな那月がいた。

「おいそこ、なんで笑ってる」

「だって悪霊って!」

「叱るなら、士郎くんを叱るべき」

「お前がただならぬ気配なんていうからだろ!」

「そこから悪霊を連想した士郎くんが悪い」

 確かに、その意見には一理あるが…。ここは、俺が折れるとしようか。

「たく、悪かったな。で、班だっけ?」

「あぁ、一緒に回ろう」

「うん、いいぞ。春宮は?」

「喜んで。むふー、楽しみ」

 何せ、春宮や相浦たちの活躍で勝ち取った沖縄修学旅行だからな。思う存分楽しんで欲しい。

「じゃ、あと二人だね。誰を誘おうか…」

「相浦と榎原じゃないか?おーい、相浦、榎原。一緒に観光しね?」

「おう!いいよー、共に果の孤島を探索しようじゃないか!」

「果の孤島じゃなくて沖縄な。俺もいいぞ。楽しみだな。沖縄」

「ん、私も楽しみ」

「よし、なら決定だな」

 すると、春宮が俺の方を見て、何やら目を丸くしていた。まるで、俺のらしからぬところを見てしまったかのように。

「どしたんだよ、春宮」

「いや、前までなら私に誘わせたでしょ。恥ずかしいとか何とか理由つけて」

「それなら、お前だって普通に榎原と話してただろ。前までなら声掛けられただけでも顔真っ赤にして受け答えすらままならなかったじゃないか」

「確かに…何故?」

「いや、俺が知るかよ…」

 自分の答えくらい、自分で出して欲しい。というのは、俺の言えた話ではないか。確かに、前までの俺なら自ら進んで相浦を誘おうとはしなかった。恥ずかしかったからだ。その羞恥こそが原因で、俺はまだ相浦に告白ができていない。

 …もしかしたら、今なら。

「不知火ー、一緒の部屋なろーぜー」

「あぁ、うん…」

 背後からバシバシと叩かれて、檜山に誘われる。俺は上の空で返事をした。こんな大声でも、あまり響かない。

「朝まで枕投げなー」

「あぁ、うん…」

『そこは嫌がれよ…』

「…ん!?」

 俺はもんもんと考え事をしていたせいで、とんでもないことになってしまったかもしれない。

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