第28話 湖の中に潜れ!

「あ!魔物……なんもないです。 早いね流石」

「どんどん行きましょう。 ふふん、これでも元Sランクですし!余裕です!」


 現在『川越ダンジョン 地下六階層』にて、俺たちは順調すぎる冒険をしていた。


 シンプルにユナが強いというね?

 そりゃそうとは言えばそうなのだが元Sランクというのはそれだけ強い訳で。


 彼女は現在有り得ないほどに分厚く、馬鹿でかく、それはもう鉄の塊と言っていいほどのアホ仕様の大剣をブンブン振り回して魔物が現れた瞬間から消し飛ばしていた。


「すっげぇ。 アレってどう見てもドラゴン〇しだよな……?」


 ちなみに戦闘スタイルも根っからのバーサーカーだったので、色々とびっくりしている俺がいたりする。

 さっきからほんわかふわふわ〜って感じに歩いてたと思ったら、背中の剣で魔物を見た瞬間に押し潰してミンチにして……ゴブリンとかの小型の奴は首を掴んで首をへし折っていた。


 見かけによらずパワータイプなユナのおかげで、俺たちはまるで戦闘に参加することなく脳筋ゴリ押しスタイルでここまで来ていたのだ。



「先輩! ドラゴンですよドラゴン!」


「邪魔なんで潰しときますね! 『ヘヴィ・プレッシャー』!!」


 *


「ユナちゃんアレ、ユニコーンですよ!初めて見ました!可愛い……かなぁ?」


「あーあれ、バイコーンですね。 ミンチにしときます。 『重力奥義・天地鳴殺』!!」


「バイコーンがペラッペラに!?」


 *


「見てくださいアレ、結構カッコイイゴーレムさんですよ?!強そー!」


「硬そうですね。 『ギガ・グラビティ』!!」


「ゴーレムさんが鉄塊に戻っちゃう!やめたげて!?」


 *


 気がつくと川越ダンジョンの川の水が溜まる場所、即ち……湖に到着していた。


 ちなみにここまでの戦闘はほぼユナ一人で片付けている。

 あまりにも強い。

 というか彼女、なんで逆に出会った時この能力を使っていなかったんだろうか?


 気になったので俺が尋ねると……。


「……なんか、あそこのダンジョンの中…………だから能力が使えなかったんですよ。 あの配信の時も何故か操作出来なくって……なんなんですかね 」


 そう言って首を傾げるユナ。

 彼女の能力は『重力皇帝カイザーグラビティ』まぁ一言で言うなら、重さを操ると言ったところか。


 彼女が持つ武具は全て重さが逆転し、彼女の前では全てのものが跪く事になる。

 王の御前とはこれの事。


 彼女はちなむと、カイザーじゃなくてエンプレスとか、クイーンとか、プリンセスとかあるでしょう!!

 とキレていた。まぁ言いたいことはわかる。


 すると湖を触っていたユナがある事を思いついた。


「この水、持ち上げて見ていいですか?なんか地下に埋まってる物がありそうなんで」


 あまりにも唐突な事を言い始めたなこの人。


 まぁいいけど。


 そもそもここの湖はエリアだ。

 敵は出てくるけど、基本こちらから入る事が出来なくて、もし仮に水の中で敵を倒してしまうと素材を拾えなくなる。

 何処かのガノト〇〇スみたいなクソなエリアらしい。

 そうレビューに☆1で書いてあった。


 まぁそういうわけでここの水場に基本皆用は無いのだ。


 *



「えっと……『重力反転』!……ええい!ダメかぁ……」


 まぁ何も起きない。

 そりゃそうだ。そもそもそんな一人の能力で何か出来るほどダンジョンは甘くないのだから。


「まぁここは何かあるとは思うけど、何も出来ない場所らしいし、いったんね。 まぁ次の階層に行きましょうや」


 俺はそう言いながらユナに近付こうとして……コケた。

 石につまづいた俺はそのまま顔面から湖にダイブしたのだ。


 そう────したのだ。


 もう一度言うが、ここはであり、ここの湖は本来触れないし潜ることなんて尚更不可能なはずなのに。


「?!ごぼぼぼぼぼぼほ!?────ぷはぁぁ!?も、もぐれた!?んなアホなぁ!」


『────無名の効果により侵入不可エリアが解除されました』


 ご丁寧に俺が潜ったあとすぐに、俺の眼前にそうウィンドウが出現して答え合わせをしてくれた。



 ……待って無名の効果って何?





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