第27話 川越ダンジョン
思えばしばらくの間まともなダンジョンに行けていなかった気がするなぁ。
そんな事をふと思いながら、俺は二人に連れられて近場のダンジョンに赴くこととなるのであった。
───それが、あんな事になるとは思いもしなかったのだが。
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ダンジョンというのは、基本的に縦穴と横穴に分かれている。
東京周辺にあるダンジョンは多くが縦穴式で、横穴式はあまり無いのだ。
ちなみにちなむと俺の家(おじいちゃんの家)にあるダンジョンはそのどちらにも当てはまらない特殊な形のダンジョンであり、その名も『異空間式』と呼ばれる奴だ。
別の場所に飛ばされることからそう名付けた。俺が言ってるだけなのだけどね?
そして俺達が行くことになったのは、割と近場にある縦穴の大型ダンジョン、その名も『川越ダンジョン』と呼ばれるヤツだ。
川越ダンジョンとは言うが、実際川越にある訳じゃない。
じゃあなぜそんな名前なのかって言うとだね……。
*
「川だー!」
梨奈がテンション高く叫んでいた。
まぁ気持ちは分かる。
そう、川越ダンジョンは中に川があるタイプのダンジョンなのだ。
つまり川越川中ダンジョンって事よ。
川があるというのは実際珍しく、そしてそれ故にこのダンジョンには水系の魔物が沢山出現するという特徴があったり無かったり。
ちなみに縦穴なのに川があるというのが奇妙に感じる人も多くいるのだけど、実際その通りで。
最初に俺も見た時は驚きを隠せなかったな。
まぁエッシャーのだまし絵みたいな感じで流れてるのだよ。
そしてそこに俺たちは受付をして入る事となった。
どうでもいいのだがこのダンジョンの適正ランクはB。
故にこのダンジョンに挑んでいる人は大半が普通より低い人ばかり。
なので周りにいるのも中高生で溢れかえっていた。
「見てください川です! すごいですよ川! 訳分からなくて面白いです先輩!」
「そっかよかったねぇ。 その反応から見るに、ここのダンジョンは初めてかな?」
「はいっ!ユナさんは……」
簡素な武装を身につけた梨奈はワクワクしながらその場で舞っている。
まぁその理由は分からないこともないのだが。
そもそも彼女は探索者(シーカー)なので、誰か付き添いに冒険者が居ないとダンジョンに入れないのだ。
そして彼女は話を聞くにそういった友達がいなかったとの事。
しかもここはBランクの中でもかなり年長者がいないとダメなので、そう言うことも相まって彼女は初めてだと言ったのだろうね。
……こんなに美人で魅力的な子がダンジョンに入ったことが無いとは……なんか彼女の周りの人、どうなってるんだろうか?
少々興味がある。
一方ユナの方はお世辞にもSランクだったので、ここは踏破済みな訳で。
むしろ人の目を気にして今日は死ぬ程ガッチガチの武装をしてきていた。
「「今日はよろしくお願いします。 あぁ、すみません声が二重に聞こえるのはこのアーマーのせいです。 一応見栄えが悪すぎるので、この鎧は配信とかで着たことが無かったので……一応身バレは大丈夫だと思います」」
重装甲の戦車かと思うほどのずっしりとした武装をつけたユナは、もはや先程までの可憐な女性の要素は果たしてどこに行ったのかと突っ込みたくなるほどの武装をガシャン、ガシャンと鳴らしていた。
「そっか。 まぁ無理しないでくれよ?」
「「ご心配なく。 そこの梨奈さんのおかげでメンタルは元に戻りましたから。 やはりいいですね、若さというのは」」
……普段の可愛く、おどおど系の喋るから一変してすごく丁寧な喋りに変わっていたので、何故だが隔たりを感じてしまう俺であった。
というかアンタも若いでしょうが。……俺もか。
「じゃあダンジョン攻略!レッッラゴー!」
先頭でそう言いながら駆け出そうとする梨奈を、俺は首根っこ掴む勢いで止める。
「待て待て。 お前は戦えんだろうが。 先頭に行くな、俺とユナの間に入れ。 ここはBランクのダンジョンとはいえ、お前は探索者だからな。 無茶は禁物だ」
「ちえっ、わかりましたよぉ先輩……」
「うむ、人の話を聞くのは良い事だ。 あ、ユナ。 俺はボス戦できねぇからボス戦手前までな。 後ド派手な魔法は使わないから安心してくれ」
「「了解です。 では私が殿をつとめましょう。 安心してください、これでも元Sランクの冒険者なのですから!」」
……なんだろう、少しだけ頼りになる人と冒険をするのが久しぶりだからか、俺はほんのり嬉しくなった。
「じゃあ行くか!───川越ダンジョン、攻略開始!!」
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知らなかった。
俺はこの時せいぜい1日あれば帰って来れると思っていたのだが、蓋を開けて見ると……一年間帰って来れなくなるとは思わなかったのだ。
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『川越ダンジョン編』→『?????編』スタート。
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