戦闘服作成開始!

「っという事で、エステラ様の社交界用の戦闘服ドレスを作りたいと思いますので、侍女の皆さん。ご協力よろしくお願いします!」

「「「「おまかせください!!」」」」」

 うおぉ! 何かエステラ様のお付き侍女一同の返事が、異様に気合入ってる気がするのは気のせいかな?

 いつもの如く使用人の皆さん(今回は女性陣かつエステラ様の専属を担当している侍女さんメインだけど)に協力をお願いしたら快く、というか気合の入り方がいつもの数倍入った豪快な返事を頂きましたた。

 やはり仕えている女主人を輝かせる物を作るとなれば、気合も普段以上に入ってしまうものなのかな?

 その割には何か気合の入り方が異様な気がするような?

 オマケに何か俺に対してもの凄い期待の籠った目を向けて来るんですけど、それって今目の前で不貞腐れながら座ってる、我らの雇用主様の機嫌を”早く何とかしろ!って意味合いでしょうか?


「私の今度のパーティー用ドレスを作ろうとしているのは分かったわ。

 だけど、どうして私がこの場に居る必要があるのかしら?」

 エステラ様は非常に不満気な表示を浮かべながら文句を垂れる。

 大抵の女性なら社交用のワンオーダードレス作るって言ったら喜んでくれるものなんだけど、ドレス作るって言ったら、ここまで露骨に嫌な表情されると、この人どんだけドレスなんて不要って思ってるんだろね?

 っというか社交嫌ってるからドレスも必要ないって考えかな?

 そもそも自分で作るって言っておきながら今更の話だけど、いくら母さんが昔世間に認められたデザイナーだったとしても、俺は所詮は無名のデザイナーの作り手だから、俺が作る物に対する信頼感が薄いからってのもあるのかもね。

 でも作ると決めた以上は、中途半端な物を作る訳にもいかないので、どれだけ文句言われようとも可能な限り要望に見合う物を作るつもりだけどね。

 もし俺が作った物が気に入らないと言われたらそれまでだけど、昨日の話を聞いている限りでは、俺が構想しているドレスは、エステラ様に大変気に入ってもらうまではいかなくても、しぶしぶ着てくれそうなドレスを作れる算段はあるんだけどさ。


「ハッキリ言っときます!

 エステラ様がどれだけ文句言った所で、もう俺達が皇室主催のパーティ強制参加させられるは、どう足掻いても覆る事がない決定事項なんですから、俺がドレスを作ろうが、作らなかろうが、新しいドレスは結局必要になるのです!

 ですからそろそろ観念してください!」

「……それぐらい分かってるわよ」

「分かっていらっしゃるんでしたら、早速本題に入ります。

 まずエステラ様だけの特別なワンオーダーデザインのドレスを作るに当たって、再度エステラ様の好みやエステラ様がドレスに求める要望や意向を確認させて頂きます」

「私のような戦場ばかり渡り歩いている者の意見なんて、ドレス作りの参考にならないんじゃないの?」

 またしても拗ねてなおかつトゲトゲしい口調で、エステラ様は自分の意見なんて聞く価値もないなんて言ってくるけど、そこまで不貞腐れるぐらい社交に良い思い出がなんだろうかね?

 ウ~ン……中々この人に根付いた社交嫌いも、一筋縄ではいかなさそうだ。


 「エステラ様の意見と要望をしっかりと理解しない事には、エステラ様が絶対満足していただけるようなドレスを作る事は出来ません」

「そうは言ってもだな……私のような仕事バカが着飾れるドレスなんて、そもそもこの世にあるのかしら?」

そしてエステラ様が不貞腐れながら放った刺々しい言葉を聞いた侍女の皆さんは、慌てて「そんなことありません! むしろエステラ様のドレス姿は、以前からとてもお綺麗でしたから」、と必死にエステラ様を慰めつつ”チラリ”と俺の方に視線をよこすと、「何か余計な事言ったでしょ!」っとでも言いたげな圧を感じる視線を送ってきたのだが、その視線とインパクトナイツの皆様から

 「団長がパーティに出席するのが決まってから、団長の覇気がほとんど感じられなくなっているため、正直言って団員全員不安を感じています。

 お願いですから何とかして団長を、普段の姿に戻してください。旦那様!」

 なんて言って泣きつかれた事も思い出せば、ふと昨日エステラ様のやり取りの中で、今エステラ様が不貞腐れるような態度を取る理由に、ふと思い当たる節があった事に気が付いてしまった俺は、ただ苦笑を浮かべる事しか出来ない。


 まさか、傍から見れば何とも情けない昨日のあのやり取りが、現にエステラ様の普段纏っている覇気を全く感じられないレベルまでそぎ落とす事態になるなんて……

 いくら世間から狂剣と呼ばれて恐れられている方が、社交界の話題一つでこんなに精神的にダメージ負う事を考えると、人間の本質って、ホントその人と関わってみないと分からないんだよね。 

 そしてこの状況を、「使用人と騎士団の皆様に余計な心配を掛けさせて申し訳ない」、っと思ってしまうのは、のエステラ様がこうなった原因に俺が一枚絡んでいる以上、この問題は俺にとっても他人事ではないので、出来るだけ早くエステラ様には、通常のコンディションまで復活してもらわないとね。

 その為の足かがりとして、現段階で分かっているドレスの不満点の再確認から始める。


「とりあえず今エステラ様がパーティの用のドレスに対して不満に思っている事は

 1・締め付けるコルセットがとにかく邪魔!

 2・ドレスが重くて動きにくいから困る!!

 3・もしもの時の武器が備え付けれないから嫌だ!!!

 以上の3点ですよね?」

「2について異議ありだ!

 ドレスは動きが重くなるだけじゃなく、防御力がゼロであるという点も、私としては気に食わない!」

「そこに関しては、俺の専門外かつ今から高い防御性能を持ったドレス開発しようにも、あまりに時間が足りなさすぎるので諦めてください。

 というか動きやすくなればその分回避の向上に繋がると思うので、防御に関してはそのメリットで上手くカバーしてください」

「……ドレスを着ている時は常に一撃必殺と離脱を心掛けるしかないわね」

 俺にすべての要望を叶える事が出来ない現実を突きつけられたエステラ様は、シュンとするのだが、そんな弱弱しいエステラ様を見ていると、何とかしてエステラ様の願いを全て叶えたいという気持ちが出てくるんたけどね。

 しかし現実は無情で、どうあがいても不可能なことに時間を費やす暇はない。

 その事を自分の頭に叩き込み、作成時間も実際の所切実に迫っている以上、【俺は今出来る最善かつ確実な方法をとらなくていけない】という気持ちを強く持たなくてはいけないのだ。

 いくら普段凛々しい姿を見せている美人が、不意に見せた弱ってる姿に”キュン”っと来たとしても、出来もしない事を出来る!などと口にしてはいけないのである!

 とりあえず今日の所はエステラ様のドレスに対しての感じている不満を、再度ピックアップした後、侍女の皆様にエステラ様のボディサイズを採寸して頂いき、本日はお開きとなった。


 こうして俺は、エステラ様の要望を可能な限り叶える為のドレスの試作品の作成に取り掛かるが、その際エステラ様の実に美しくて素晴らしいぐらい整ったボディサイズには、正直驚きを隠せなかったね。

 そして何故からか、「具体的に知りたい!」、って声が聞こえてきた気がしたけど、残念ながら乙女の永遠の秘密を口にするのは、万死に値するので口が裂けてもいえません!


 試作品を制作するあたって、実は前々からエステラ様の要望の一部叶えるのにうってつけの素材を考案してはいたんだけど、中々最適な材料が見つからないので、実はその素材を作る事は半分諦めていたんだよね。

 行商さんが中々面白い材料を紹介してくれたおかげで、つい最近悪くない出来の素材が完成していたこともあって、エステラ様の要望を叶える試作品のドレスは、割と早く完成した

 では早速明日エステラ様に試着してもらいますかね。

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