第2話
後日、朝になると北陽学園には多くの生徒が登校する。特に何もない高校生活。だったのだが、今日に至っては異常な光景を見る事になった。そこには、ポニーテールの少女が大きな動く袋を片手で引きずっていた。しかも何かご機嫌な様子だった。
「コラぁ!そこぉ!何やってるのぉ!」
「あ。会長!ただ登校してるだけですよ!」
「その袋に入ってるのはなんなのぉ?なんか動いてるけど」
「あ。これですか?弟拉致中なだけですよ?」
「拉致ぃ?てことはぁ、そこに弟さんいるんだぁ」
「ですですぅ。逃げようとしてきたから、後ろから縄で縛って袋に入れたんですよ!つまり強制連行です!」
「そうなのねぇ。それならそれで登校して良いわぁ!」
「やったー!それなら何も心配ないですね!」
「心配ないわねぇ」
「心配しかないだろ……てか、誰かツッコめよ……その前にこの袋から出せ!」
と、袋から声がした。
「まぁ。このように袋から声するけど、無視していいから!」
「そうなのねぇ。でもぉ流石に目立つからぁ。こっちに来てくない?」
「はーい!分かりました!」
と、生徒会長である結実は袋を引きずる少女に誰もいない場所へと移動を促した。
§
栄太と椎奈は登校した後すぐに生徒会室前の目安箱を生徒会室に運んでいた。生徒会室で目安箱の中身を確認していた。
「栄太。目安箱の中になにか入ってる?流石に一日だから入ってないか」
「いや。入ってるぞ」
「入ってるの?なんで?設置して一日もないよね!」
「そうなんだよねぇ。でも一つだけだね」
「でも、流石に一つだけかぁ。それにしても早いな」
「だな」
「おはよぉ!」
と生徒会室のドアを思い切り開ける音が聞こえた。そこには、生徒会長の黒川結実と二つの大きな袋が下に転がっていた。
「会長!その下に転がってるものは何ですか!」
と、流石に違和感あり過ぎたからか栄太はツッコみをいれる。
「あ。これぇ?」
§
時は、数分前まで戻る。会長である、黒川結実は先ほどの大きな袋を引きずっていた女生徒と、人目がつかない倉庫の方に来ていた。
「会長!用事って何ですか?」
「ちょっと待ってぇねぇ。確かここにあったはずなんだけどなぁ」
と、結実は倉庫の中で何かを探しているようだった。
「おっかしいなぁ?確かここに………あった!」
「見つかりました?」
「えぇ。ちょっと後ろ向いててもらえるかしらぁ?」
「え?あ。はい」
と、言われたまま後ろを向いた。
「えい!」
「え?」
後ろからいきなり大きな袋を被せられた。突然の出来事により困惑しているようであった。
§
「まぁ、そういう事でぇ。二人共拉致って来ましたぁ!」
「拉致って来ましたぁ!じゃないですよ!どうするんですか!」
「人が足りないから、ここの生徒会に入れるぅ?」
「入れる?じゃないですよ!その前に袋から出してあげてください!」
「分かったわよぉ」
と、会長は二人共袋から出してあげた。出てきた男女は似たような顔つきをしていた。
「やっと出れた!しかも強制的に生徒会に入れられる流れになってるんだけど、ここの会長はどうなってるんだ?」
と、男子生徒の方は言う。
「私まで拉致られるとは……ここの会長さんおかしくありません?」
と、女子生徒の方は言う。
「えぇ。ここの会長は天然過ぎるので俺たちが止めないとなんですよ……そういう俺らも最近入る事になったんですよね」
「ん?その前に二人自己紹介してくれないかしらぁ?」
「俺は、双葉奏。ここの一年でコイツの弟でここの一年だ」
「はーい!私!双葉朱里!私も一年生で私たち双子なの!」
「そぉなのねぇ。カナデ君とアカリちゃんね。今ない役職だと会計かしらぁ。二人共そこで良いわよねぇ?」
「私は別に構いませんよ!」
「俺はまだ入るって決めてねぇぞ!」
「そぉなのぉ?」
すると、栄太が奏の肩に両手で触れた。
「頼むよ!この人たちを俺一人で止めるの大変なんだ。人助けと思って入ってよ!」
「確かに、この人たちを止めるのは大変だな……分かった。入るよ」
「やったぁ!これで人数が揃ったわぁ!ありがとぉ!」
「折角入ることにはなったけど、何するの?」
と、朱里が聞く。
「私たちはねぇ。相談課って言うこの生徒会の部署を作ったのぉ。困った人を助ける部署って所かしらぁ」
「あ。そうなんですか!それなら面白そうですね!」
「でしょでしょぉ!」
「あのぉそういえば、その相談課の目安箱に一枚入ってましたよ」
と、椎奈が言う。
「そぉなの!早速仕事ねぇ!」
と、結実はやる気満々だった。
「で、その依頼ってどういう内容なのかしらぁ?」
「私が読み上げますね。えぇ『私は、一人で料理をしたことがありません。簡単で、好きな人の胃袋をつかむ料理を教えて下さい。』と、このように一件目は料理の依頼なんですよね。私もそんなに料理とかやったことないのでお手上げなんですよね」
「そうなんですか?だったらやってみませんか?料理!」
「そうよぉ。やってみればいいじゃない!私も料理とかよくするから任せて!」
と、朱里が言うと結実も言う。
「でもぉ。料理なんてやったことないから、上手くできるか心配なんですよね」
「それなら、私たちで教えるのでやってみましょう!
「うんうん。でも場所はどうするのぉ?」
「栄太の家」
「おい!椎奈!今なんていった!」
「だから。栄太の家。今、親が出張とかで一人なんでしょ?」
「一人だけど……」
「なら決まりね!」
と、椎奈は嬉しそうに言い、放課後に栄太の家で集まって料理の講習会を開くことになった。栄太は油断していたのか呆然と立てつくしていた。後ろから、奏が栄太の肩を叩く。
「災難ですね。僕なら逃げてましたよ……」
「災難もなにも。いきなり過ぎるんだよ!早く部屋綺麗にしないと……」
§
放課後、一ノ瀬宅。栄太の家へと集まった。栄太は授業が終わった後、直ぐに家へと帰った。家へと向かおうとしたら椎奈がどさくさ紛れて付いて来ようとしていたが、全力で阻止した。会長達は、料理をするための買い出しに行ってくれていた。
栄太は、家の中を掃除していた。家の中はゴミが散らかっているような汚い部屋ではなかったが、綺麗なままで人を呼びたいと思い、掃除機やモップなどで綺麗にしていた。
「ふぅ。こんなもんでいいだろ。そろそろ来る頃だな」
と、栄太は掃除終えて待つだけになった。すると、ピーンポーンと、インターホンが鳴り響いた。玄関のドアを開けるとみんなの姿があった。
「よっ!終わった?」
と、荷物を一つ片手で持っている椎奈がいう。
「部屋綺麗にしたから、入って!」
と、栄太は言うとみんなが部屋のリビングへと上がった。なぜか、奏だけが両手いっぱいの荷物を持たされていた。
リビングには奥にはキッチン、複数人で囲めるテーブルとイスがあり、手前にはくつろげるようなソファとテレビが置かれている。買った荷物はテーブルの上へと置かれた。
「早速着いたことだしぃ。作るぞぉ!」
「おお!」
「お、おぉ。」
と、結実と朱里はとてもやる気であったが、椎奈だけやる気がなかった。
栄太と奏は、おとなしく椅子に座っていた。
「椎奈さんってなんで、料理苦手なんだ?」
と、奏が栄太に聞く。
「あぁ。アイツかなりの不器用なんだよ」
と、栄太は言うとキッチンの方から騒がしい音が聞こえて来た。どうやら教えるのが大変らしい。
§
一方
「ベターなものだとぉ。卵焼きでも作ってみようかしらぁ」
「ベターだけど、難しくないですか?」
「別にぃ、出汁と砂糖を溶いた卵に入れて焼くだけだよぉ」
「会長!それだと、上手く伝えられてませんよ!砂糖入るので焦げやすくなるから慣れないと難しいんですよね。でも、やってみますか?」
と、朱里じゃやってみるかと提案する。
「分かった。頑張ってみるよ!」
椎奈はやる気を出し、早速作ってみることにした。
数分後、結果はと言うと、丸焦げでうまく巻けてない卵焼きみたいなのが出来上がってしまった。
「やっぱり。私には料理なんて向いてないんだ……」
椎奈は完成しと物を見て落胆した。
「誰でも失敗はあるわよぉ。でも流石に焦げすぎねぇ」
「レシピ通りに作ったのですから味は良いんですけど、見た目も綺麗な見た目じゃないと好印象はもてないですね」
「卵焼き作るの難しすぎるよぉ……もっと簡単なのないの?」
「簡単なのだと、スクランブルエッグとか目玉焼きとかが一番ですかね」
「確かに簡単ねぇ。でも朝ご飯過ぎないかしら?」
「確かにそうですね。それなら定番の肉じゃがを作ってみない?」
朱里は椎奈に提案する。
「それはいいわねぇ。切って煮込むだけだから簡単だしねぇ」
「ちゃんと、作ろうと思って材料は買って来ましたよ!作りましょう!ね!」
「そういうならやってみるよ!」
「朱里ちゃん。後は頼めるかしらぁ。みんなもお腹空いてると思って何か作るからぁ」
「は、はい。分かりました」
椎奈の肉じゃが作りは朱里のサポートによってなんとか成功に終わった。ジャガイモや人参の切り方が少し雑ではあったが、なんとか形にはなった。上手く出来たあと、椎奈の料理の苦手意識は消えたが、卵焼きは下手に出来るからと二度と作りたくはないらしい。あの後、出来た肉じゃがはみんなに好評だった。結実は、椎奈達が肉じゃがを作っている隣で、カルボナーラを作って振舞っていた。天然な感じもあるけど、日頃自分で作ってきているからか、とても美味しかった。その後、食べ終えた後、その場はお開きになった。
そして、一番重要なことである結論は、
『料理は最初は難しいかもしれない。まずは挑戦してみてから、失敗したら簡単なことから始めること。肉じゃがは定番で簡単なのでオススメ もし、不安で一人じゃできなかったら私たちが助けに行きますので是非、また頼って下さい」
と結論をだし、依頼主の子に送ることにした。
§
後日、栄太は学校に登校し、いつもの席へと着いた。そこはいつもの景色、いつもの光景。席に着く。すると、椎奈が近寄って来た。
「お昼また買いに行きたいから付き合って!」
「昨日、料理を教えてもらったのに作ってこなかったのか!」
「教えてはもらったけど、流石に朝は苦手だしなぁ」
「朝は苦手って。昨日の肉じゃが良かったけどなぁ」
「そう?なら、今度作ってこようかな」
「それなら楽しみだな。弁当は作らないのか?」
「作るの面倒だし、パンの方がいいや」
「相変わらずだな。その方がお前らしいか」
「そう?朝弱くても買えるからいいしね」
「その方がいつもと変わらない日常か」
「だね」
今日もいつもと変わらない日常が始まる。生徒会室の前には、赤い目安箱があり、また一人の黒い影があり、また一人、また一人と相談者が現れるのであった。
北陽学園生徒会ー相談課ー KS @KS08
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