第1話
それからというものの、それからお昼は三人で一緒に生徒会室で食べることとになった。
「早速で悪いのだけどぉ。生徒会に人が集まったらしたいことがあるのよねぇ」
と、生徒会長である黒川結実は話を切り出した。
「何ですか?」
と栄太は聞く。
「この生徒会で困っている人を助けるのぉ。無難に目安箱を設置するのがいいかしらぁ」
「目安箱だとなんか趣旨変わってきません?目安箱って生徒の学校に対する不満や解消して欲しい事を書く物なんじゃないですか?」
「それもそうだね。目安箱だと普通過ぎて誰も入れないんじゃないですか?それなら誰もが入れやすい感じにするとかでもいいですし」
と、椎奈は牛乳をストローで飲みながら言う。
「それもそうねぇ。それなら目安箱の穴の形を変えてみたらいいじゃないかしらぁ」
と、結実は、紙に書き始めた。丸●、三角▲、星★型
「うーん。書いてみたけどぉ。丸は普通過ぎるかしらぁ。三角と星型はなんか違うのよねぇ。いっそのこと穴の形はハート型にしてぇ、周りには派手にデコレーションしてみるのはどうかしらぁ」
「そ、それは……やっぱり普通にしましょ!ねっ!椎奈もそう思うだろ?」
「えぇ。穴の形とか変えても関係ないですって!普通のにしましょ!ねっ!」
((変なのになる前に何とか阻止しないと!))
「じゃぁ…丸にするぅ?あの形だったら可愛くなると思ったのになぁ」
「逆に、派手な感じだとなんか入れにくいじゃないですか。普通にいきましょ。ね」
「分かったぁ。明日でも作って来てみるねぇ」
「それより、目安箱に代わるもの考えませんか?」
と、椎奈はパンを食べながら話題を変える。
「そうねぇ。部活?まではいかないけど、生徒会で何か出来ないかしらぁ?」
「だったら、何か部署とか作ったりしませんか?」
と、椎奈は提案する。
「それはいいね!」
「それがいいかもしれないわねぇ。『相談課』って名付けてやってみましょうか。生徒会だけど生徒会じゃないし部活でもない部署。生徒会が管轄の部活って所かしらぁ。どおぉ?」
「それ、いいですね!やりましょう!」
「それなら大丈夫だわ」
「決まりねぇ。早速作ってもいいか、先生に聞いてみるわぁ」
「分かりました。やるとしても目安箱みたいなの必要になるんじゃ………」
「あ。確かにいるね……」
「目安箱いるのねぇ!明日頑張って作って来るわねぇ!」
と、生徒会長である結実はやる気満々だった。自分の自信作をみんなに披露したいがごとく。
「「しまった!あの会長のセンスの事だと不安しかねぇ!」」
「あのぉ……会長さん?」
と、栄太が尋ねると、結実は気分がかなり良いままだった。
「何?目安箱ならまかせてぇ!一番の自身作を作って来るからぁ!」
「わ、分かりました……」
と、お昼の時間が終わるチャイムが鳴り響く。
「あ。お昼のチャイムだわぁ。もうこんな時間かぁ。私、放課後予定あるから、また明日のお昼にでも集まりましょ。まぁ生徒会って言っても今のところ、やることないのよねぇ」
突如始まった一回目の生徒会活動は幕を閉じた。放課後は、特にすることも無いため、集まりはないらしい。ただ会長自身が早く自信作を作りたいから無いのでは?と栄太と椎奈は感じていた。
§
後日。お昼休みに再び生徒会室へと集まった。お昼はいつもと同じように栄太は自分のお昼ご飯と椎奈の分も買う為に荒波に飲まれていた。それはボロボロになる程の混みようであった。これは、人混みにトラウマになるのも頷ける。
お昼ご飯を買いに行った後、栄太と椎奈は生徒会室に行くと生徒会長の結実の姿があった。どうやら、今日はちゃんと弁当を持参してきたらしい。
「はい!これぇ自信作なのぉ。見てぇ」
と、派手な箱があり、最早芸術作品みたいな目安箱らしきものがあった。
「こ、これはなんですか?」
「流石に派手すぎじゃないかしら……」
「そうぉ?早速で悪いんだけど、この箱に突っ込んでもらえるかしらぁ?」
「え?この中突っ込むんですか?」
「私はやらないから、折角だから手を入れてみればいいじゃん」
「早く入れてぇ」
「仕方がないなぁ。分かったよ。入れればいいんだろ!入れれば!」
と、栄太は箱の中に手を入れた。手を入れると何か入ってる感じだった。
「箱の中はなんじゃ?当ててみてよぉ」
「そういう事かよ!目安箱関係ないじゃん!箱の中身はなんだろな?じゃねぇよ!」
と、栄太は言われたまま箱の中に手に入れた。
「イテッ!てか、この中に入ってるの地味にチクチクして痛いんですけど!」
「で、何だと思うぅ?」
「何言われ言われても、痛いのは痛いんですけど!」
「栄太。そんなに痛いの?」
「うん。チクチクして痛い……。まさか、これ栗とかですか?だってこんなにチクチクするのは、それしかありえないですし……」
「じゃあぁ。その箱の中開けてみてぇ」
栄太は、箱の中から手を抜いた。その箱は、蓋がついており、開けれるような仕組みになっていた。そして、中には……
「え?これってウニですか?」
「どこから拾って来たんですか!こんなの!」
「ん?たまたま海辺に黒い栗あったから拾ってきただけだよぉ?」
「なんで、こんなことしたんですか?」
と、栄太は結実に聞く。
「そうした方が面白いじゃない?」
「面白いからって………目安箱はどうするんですか?」
「えぇ?これじゃダメぇ?」
「派手過ぎてダメです」
「そんなぁ」
「はぁ。そういう展開になると思って、私、作ってきましたよ」
と、椎奈は穴の開いた赤い箱。目安箱を取り出した。
「おお!これだよこれ!でも、なんで赤?」
「なんでって。ただ好きな色なだけだよ?」
「へぇ。好きな色だったからか」
「うん」
「まぁ、別に何も問題ないからこれでいきましょう!」
「分かったわぁ。これで行きましょうかぁ。それとぉ、相談課の件は昨日聞いて来たら、場所もここで使うだけだから大丈夫だってぇ。早速明日から始めましょうかぁ」
と、生徒会室に相談課が設立された。目安箱は赤い箱でシンプルな作りの物になった。直ぐにその目安箱は生徒会室に配置され、目安箱の張り紙には『北陽学園生徒会相談課です。 何かお困りのことがあれば、この箱に書いて入れて下さい。私たちがあなたのお困りごとを解決します』と説明の紙が張られていた。
§
放課後の教室にて
「椎奈。お前やっぱり生徒会に熱意あるだろ。」
「まぁね。普段は何もない日常。だけど、この生徒会にいるだけで、少しでも何もない日常から、何もある日常に変わるからと思ったのかな。生徒会長があんな感じだけど、面白くなりそうだしね。折角だから、できる限りのことをしようと思ってね」
「そうだったんだ。確かに。あそこなら何もある日常に変わりそうだな。退屈はしなさそうだよな」
「そうだね」
と、彼女はその日、その時一番の笑顔を見せてくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます