北陽学園生徒会ー相談課ー

KS

プロローグ

俺、一ノ瀬 栄太は平穏な毎日を過ごしていた。

現在、高校二年生になり、いつもと同じ様な学校生活だ。これといった刺激的なこともないのである。

誰かと付き合っているの?と聞かれても答えは『ノー』だ。誰かとつるむことは楽しい。が、それとこれとは全く違うことであろうと思う。誰かと恋愛で付き合うなんて自分の時間がなくなるだけだろ。その相手にお金や自分の貴重な時間を費やすだけだと思う。

 だが、友達としてつるむ、そして恋愛対象外な奴らと関わるなら話は別だ。

結婚願望?恋愛?そんなの勝手にやってろ!程度でしか思わない。冷めた奴。って言われても仕方がない。所詮、自分はそういう奴なのだから。

§


「栄太。付き合って!早く!」

と隣の席ショートヘアが特徴の女子。三上椎奈が言う。現在時刻、昼休みが始まる直前。コイツは毎日こうやって言ってくるので、付き合う意味も分かり切っている。

「全く。今日もまた買いに行くのか?」

「当然でしょ!」

「あの荒波にか?」

「当然!」

「いい加減弁当とか作って来ないのか?」

「朝早く作らないとだし…面倒なの!」

「そうかい。そうかい。」

「だから!早く付き合え!」

「分かったよ。今日も付き合えばいいんだろ。」

と、俺、一ノ瀬栄太はやれやれながらも付き合う事にした。購買という戦地に。これは恋愛として付き合うではなく、一緒に戦地に赴いてと言っているのと同じなのである。

「今日も購買に行って買いに行くんだろ?何買えばいいんだ?」

「えーと。メロンパンとコッペパンのイチゴジャムの奴で!」

「で、飲み物は?」

「牛乳でお願い。」

「分かったよ。」

そう言いながら、栄太は購買に買いに行こうとしたとき、椎奈は

「今日は私もついて行く」

「今日はついてくるのか?」

「いつも買いに行かせてもらっているしな」

「なんか珍しいな。いつも人混み苦手だから買いに行かせてなかったか?」

「今日は行くの!人混み苦手だけどさ」

「やっぱり苦手なのかよ」

そんな他愛のない会話をしつつ購買所へと向かった。二年生の教室は学校の二階にあり、購買所は一階にある。購買所には沢山の生徒が使うため、お昼の時間になると戦場へと変わってしまう。そのせいか、自分の弁当を持って来る生徒もいる。


 購買所に着くと相変わらず人でごった返していた。

「相変わらず混んでるな。ここは」

「そうなんだよね。だから正直今日も行きたくなかった」

「よかったのか?購買という戦場に来てさ」

「今日はそういう気分だったんだよね。でも買いには行けないからそこは頼むわ」

「やっぱり買いに行かせるのかよ!」

「当然でしょ!そのために付き合ってもらっているんだから!」

「当然なのかよ!」

「一人で行ったら人に飲み込まれて死ぬからな。それでトラウマが……」

「そういえば言ってたな。人混み苦手だったんだな」

「そうなの。ここで待ってるからお願い」

「全く。しょうがないな。買ってきてやるよ」

と、椎奈はお願いし、栄太は頭を掻きながら購買へと向かって行った。購買所は多くの人が利用するからか、広く作られている。少し離れた所に自動販売機があり、その近くに座れるベンチが設けられていた。椎奈にはそこのベンチでやすんでもらっている。

 栄太は人混みのある購買に向かっている途中に後ろを見たら椎奈が手を振っていた。

購買所は買えないほどの人だかりであったが、まだ買えるほどだと思い安堵した。入口にはキョロキョロして困っている長い茶髪の女子生徒を見かけた。栄太は余程困ってそうな気配がしたので声をかけた。

「すいません。どうかしたんですか?」

「財布を家に置いてきちゃったの~。頼る相手もいなくてぇ~」

「だったら今日は俺が出しましょうか?お昼食べれないと困りますしね」

「そうわよねぇ~。でもいいの?」

「いいんですよ。俺もお昼を購買で買いますし。そのついでで買いに行くだけですから」

「そう?なら、お願いするわぁ」

「買いにいくので、何か食べたいものとか食べたいのありますか?」

「う~んとオムライスかなぁ」

「オムライスなんて購買にありませんって!せめてパンとかおにぎりとかで!」

「え~。オムライスないの?あのフワフワでトロトロのやつぅ」

「しかもフワトロのやつかよ!」

「そう。フワフワでトロトロのやつぅ。あれが一番なのよねぇ」

「それは否定しないけど……その前にお昼どうするんですか?」

「うーん。君に任せるよぉ」

「分かりました。適当に選んできますね」

そういい、栄太は購買へと買いに向かった。少し時間が経ったせいもあって人が増えてきた。だが、買えないほどでもなかった。自分の食べる分のパンと飲み物、そして頼まれたものを買った。


「買って来ましたよ。こんなもんでいいですか?」

と、先ほど財布を忘れた女子生徒の元に買ってきたパンを手渡した。

「ありがとぉ。アンパンと牛乳?張り込みか何か?」

「違いますよ!てか、アンパンと牛乳って完全に刑事が張り込みするセットじゃん……。それと、これも」

と、袋からメロンパンを取り出して渡した。するとベンチの方から空気も読まず走ってくる音が聞こえた。

「栄太!お昼買ってきた?それより、その人はだれ?」

椎奈が慌てて駆け寄ってきた。栄太の持っている袋からパンと牛乳を取り出し、そして不思議そうに聞く。

「名乗るのが遅れたわね。黒川結実よ。一応三年生でここの生徒会長をしているわ」

「そうだったんですか!」

「そうよぉ。こんな性格だから、抜けているところありますしぃ」

「だから今日、財布忘れてたんですね」

と栄太は納得したかのように言う。

「あー。そういうことね。栄太が財布忘れた会長を助けてあげてたって訳ね」

「まぁ。そういうことだ」

「お礼がしたいのだけどぉ」

と結実が言う。

「お礼はべつに何でもいいですよ」

「そおぉ?なんなら生徒会に入らない?いやむしろ入って!今、人が居ないのぉ!」

「いきなり言われても困りますよ!」


「そうですよ!なんで人が居ないんですか?」

「他の子達は、卒業とか転校とかで今一人なんだよねぇ。貴方も入ってくれない?」

「貴方は生徒会に入ってくれれば誰でもいいんですか?」

と、椎奈は訴える。

「えぇ。誰でも言い訳ないよぉ。でもぉ。早めに助けてくれれば助かるなぁ」

と、結実は言い、栄太と椎奈は互いに顔を合わせた。

「俺は大丈夫ですよ。ちょうどどこの部活にも入ってませんし。後俺、二年の一ノ瀬栄太って言います。椎奈はどうだ?」

「え?私?まぁ栄太が入るなら……。別に私も入っても大丈夫だけど…」

と、椎奈はしぶしぶ答えた。

「それならぁ………」

§

それから、生徒会長の黒川結実により、栄太は副会長、椎奈は書記に就くことになった。副会長には一番支えて欲しいからと男子の栄太を選んだらしい。こんな感じの生徒会長でもしっかり物事を考えているのだと、ほっとした。

 これからは、退屈な日常が終わりを迎えようとしていた

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