第4章:厄災顕現
第68話:祭りの準備は忙しく
山へ行った連休が過ぎて、学校で二日ほど過ごし……着々と進んでいくダンジョン祭と共同で開催される文化祭の準備を式と綾音に朝日を加えた四人でやっていた。
「麺は知り合いの店が仲介してくれて用意できたし、肉は結構良いのを椿さんのツテで用意できた――で、肝心の野菜は霊真のバアルが死ぬほど用意して食材に関しては準備オッケーだ!」
発注書……というか、用紙にそれを親友がまとめるのを聞きながらも、俺は召喚獣達と力仕事で屋台の設営を行っていた。
「それにだ――ここからなら文化祭中にクシナダちゃんのライブが見える!」
ふははと高笑いする珍しいテンションの親友を見ながらも……俺達は作業を進め、かき氷の屋台と焼きそばの屋台の設営を終えた。
「霊真……あれ、なんとかして」
「式のアイドル好きは、俺の知ってる方で散々理解してるから無理……変に止めたら爆発するだろ」
「それはそう、というかそっちの式もそうだったんだ」
「あぁ――推しが一人じゃ無かったから綾音と俺を連れて全国ツアーに参加させられた時とかやばかったぞ……ほらお前って運良いし」
「…………変にだけどね。でもそっか、てことは全ツアー制覇もしたんだね」
「あぁ綾音が応募すると全部当たるから、長期休みや連休は日本旅行だ」
懐かしいなと思いつつも、記憶の限りだが無限に体力があった式に付き合った俺等はかなりの地獄を見た。数少ない親友の趣味って事と、俺も楽しんでたから付き合ったのはいいが……お小遣い厳しかったなぁと。
「……仲、良かったんだね……私達」
「そうだな、多分ダンジョンがある以外は殆ど同じだ」
「うん……それなら嬉しいかも、そっちの私もちゃんと霊真達と仲良くて」
少ししんみりしつつも……そんな事を話して、俺達の準備は終わった。
あとは明日始まるダンジョン祭まで休むだけなんだが――。
「っとまた地震か、最近多いよな」
一度周りを見渡し、伸びをしようとしたところで軽めの地震が起きてしまう。
幸い何かが崩れる規模では無いが、ここ数日間ずっと起きてるもので……少しだけ不安だ。
「なぁバアルー屋台は無事かー!」
「主! しっかり魔法で支えたので無事であるぞー!」
「ならよし、さんきゅうな」
「くっ――」
「って大丈夫か?」
とりあえず大丈夫なようなので、感謝を普通に伝えれば……なんかバアルの奴が胸を押さえてうずくまった。
「いや心配するな主、我はただ主に感謝されたのが嬉しいだけだ」
「いちいち大げさだよなお前……まあいいや、感謝自体はいつもしてるし、そんな気にすんなって――というか、今日も手伝ってくれてありがとな」
「――我の方こそ、主の手伝いが出来て嬉しく思う」
「じゃあお互い様だな……えっと、もう準備は殆ど終わりだから……式達も帰るっぽいし、俺等も帰ろうぜ?」
「そうだな主、焼きそばを作る練習のため、我等も早く帰還しよう!」
大げさな動きで俺へとそういい、式から聞いたとか言う焼きそばの極意を俺に話すバアル。料理好きだしなとか考えながらも……俺が皆の方に向かおうとすると、
「なぁ主よ、今は楽しいか?」
珍しく真剣な声音でバアルの奴がそう聞いてきたのだ。
「ん? あぁ楽しいぞ」
「ならばよしだ! ――ふっ祭が始まれば我の秘技を人間に振る舞えると思うと楽しみだな! というか主よ、一緒に祭りを巡ろうではないか!」
即答すれば、更にやかましくなる……バアル。
……そういえば原典が神であるこいつは、人間の営みとかが大好きで、祭りとならば率先して楽しみような奴だったなぁと。
「よし――ってまた地震かよ」
――――――
――――
――
……微睡みの中、記憶を手繰る。
暖かい大地の中で、私は眠り――最期の瞬間を反芻する。
全てに滅びしか与えられず、他者を救うことが出来なかった私を終わらせてくれた彼等を――いや、彼を想う。
あぁ、好きだ誰よりも愛している。
忘れられない。否――どれだけ経とうとも、忘れられないあの英雄を想い、焦がれて、どこまでもあの記録を愛でていたかった。
だが、こうして私の意識が戻ったという事は、世界に滅びを与えなければいけない――今度は、どんな者と対峙するのだろうか? 初めて終わらせてくれた彼と同じような者に会えるのだろうか?
「きっと……無理だろうな」
そう言葉にだして……私は体を作り直す。
……最期の記憶にある――レイマ・カリヤと対峙した姿で、彼を愛した私の姿で。
私は、大地より生まれし災害、
「なぜ目覚めたか……というのはいい、私は兵器であり災いなのだから」
こぽこぽと私の周りで
……植物が生えては燃えて、地面が揺れて……私の根城を作り出す。
「さぁ人間よ――私という試練を超えてくれ」
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