第7話:ダンジョン探索
……やっぱり二人は強いなーっと心底思いながら俺は後を着いていく。
襲いかかるワイバーンの群……だが今のその全てがルナとソルによってワンパンで倒されていき、さっきから無限に凍死体と焼死体が量産されていた。
俺の初期メンバーである二人の狼は月と太陽の権能を持っている。
能力は幅広すぎて説明しづらいのだが……わかりやすくいえば、ルナが絶対零度でソルは太陽の焔を操ることが出来るのだ。
そして二人が能力を使えば使うほど周りの環境が耐えられなくなり、場所そのものが変質していくのだが……そのせいか吹雪の中にいるのに結構暖かった。
「二人ともーやり過ぎんなよー」
一応そう言ったんだが、完全にはっちゃけて勝負に集中してる二人には声が届いていないようで無尽蔵に湧いてくるワイバーン達が倒されていく光景のみが見える。
……というか二人が強すぎるからなのか、大体のワイバーンが一撃で死んでいくこのダンジョン。強さを確かめる目的で来たはずなのに、一撃で終わるせいであんまり検証が出来なかった。
「なんか竜種も結構いたんだが……全部今頃砕けてるんだよなぁ」
二人の力を確かめられそうなワイバーン以外の魔物もいたんだが……それに至ってはワイバーンよりも惨く凍らせた挙げ句に砕かれたのだ。
それを考えると思ったよりこの世界のダンジョンの魔物って弱いのかもしれないと、そんな思考が俺の中に生まれてきた。
「……警戒しすぎたのか?」
崖の下にあった森を進みながら独り言をつぶやき、二人の後を追っていたのだが……あまりにも速すぎたせいではぐれてしまった。
「あいつららしいけどさ、何処まで行ったんだよ」
少し周りを見渡しながら吹雪に埋まる森の中を歩く。
殆どの敵が倒されたからか安全だが一応何が起こるか分からないので警戒し……急に下から感じた気配に俺はその場から後ろに飛んだ。
そして数秒もしないうちに地面から緑の宝石のような体躯をした竜が姿を現した。
「――なんだこの魔物、初めて見るぞ」
常識が通じない魔物らしく、エメラルドを竜の姿に加工したかのようなその化け物。そいつはその巨体に見合わぬ速度で俺を認知した瞬間に攻撃してきた。
かなりの速度、警戒して良かったと思うのと同時に――この世界で初めて遭遇する未知の魔物に少しの好奇心が疼く。
どれだけ強いか分からないし苦戦するかもしれない――ってそう思ったんだが。
「あ~でっかいの発見! ――っておい、ボクのレイマに何するつもり?」
「――殺す」
悲惨なことに森の奥から出てきたソルの炎によってそいつの頭が消し飛んだ。
いや消し飛んだという表現は間違っているだろう……正確に言えば完全に頭が融解し消えたのだ――しかもそれだけにとどまらずルナによって作られただろう氷の戦斧によって体を抉られた。
「……二人とも、競争はいいのか?」
「殆ど終わった。もう周囲の魔物にはいないよ、ますた」
「ねぇねぇレイマ~今のトドメはボクだよね? だからボクにご褒美頂戴?」
「大体は魔物の強さは分かったからいいけどさ……やり過ぎだぞ二人とも」
ダンジョンというものの性質を理解してないから何も言えないが、環境が完全に変化しているし、魔物が湧かないほどの倒されたこの現状はもしかしたら不味いのかもしれない。
ダンジョン配信とやらが人気の世界だし、何度か潜ったり装備を集めるハクスラ的な側面もあるのは調べて知ったのだが、それを考えるとダンジョンの魔物を狩り尽くすのは御法度な可能性もある。
「……頑張ったのに?」
……けど、そう思ったんだが。
そう言ったら少し涙目になったソルを見て、言う必要なかったなと反省する。
ソルからすれば久しぶりの召喚な訳だし、頑張り屋でもあった彼女の事を考えると本当にやる気を出して俺のために頑張ってくれたのだろう。
「悪い……ありがとなソル、知りたいことは知れたし助かったよ」
「えへへ~でしょう? 流石はボクだね、だから明日デートしよ」
「……噂になるから無理」
人型のソルの身長は148センチぐらい。
それにあり得なくらいに顔が整ってるし、この世界の俺の知り合いに見られた時の言い訳が思いつかないのでとりあえず断っておいた。
こっちの霊真の日記を見るに数人友達がいたようだし、それに会った時にぼろが出るのは不味いから。
「……ちっ」
「露骨に舌打ちするなよ……まぁ、機会があったらな」
「え! いいの? 嘘じゃ無い!?」
「お前等に嘘つくかよ」
「絶対、絶対だからねレイ――」
しかしソルの言葉が最後まで続くことは無かった。
理由としては彼女の元に最初俺を襲った火球が飛んできたのだが――流石のソルだし、気づいたようでその炎を吸収した。
「――殺す」
自分の言葉が最後まで続けられなかったことにキレたのか、周囲の温度が一気に上がった。俺ですら熱いと感じる程に温度が上昇し、姿を狼に変えたソルが火球の主の元に疾駆する。
「…………そういや、火球吐いてくる奴いたな」
「どうするのますた? あぁなったお姉ちゃんは止まらないけど」
「乗せてくれるかルナ……追いかける」
「ん……任せて」
そして彼女を追いかけるためにもルナに乗せて貰い、そのままソルの後を追ったのだが――そこで見た光景は、
「わぁ――ラグナロクぅ」
太陽の力を遺憾なく発揮するソルとそれに襲われるとても頑丈そうな鱗に包まれた黒い龍だった。
見るからに別格なそれ、確かダンジョンにはボスという者がいるそうなので、その存在感からそれが一目でボスだということを俺は理解する。
「ルナ加勢してくれ、指示は俺が出す」
その言葉と共に頼もしい彼女が戦闘態勢に入ったことにより、俺も自分の周囲に魔方陣をいくつか展開して黒龍に挑むことにした。
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