第5話:いざダンジョンへ
目が覚めてから二日ほど、この世界の情報を集めながらも俺はダンジョン配信というのが気になったので、重い腰を上げてそれについて調べることにした。
「えっと……要は前の世界で言うゲーム実況のリアル版? 的な感じか?」
架空であったファンタジーが現実になったことにより、体験できなかった未知を経験できるこの世界は戦う才能のある者の戦闘を娯楽として見てると……。
つまり、この世界の根幹となっているダンジョンにはそれだけの未知や冒険が眠っているって事なのか?
「あー……一個一個のダンジョンが軽い異界になってるのか」
それからさらに調べてみれば、ダンジョンの特性などを知ることが出来たんだが……わかりやすく言えば、ダンジョンというのは一個一個が独立した異世界であり、そのダンジョンに沿った魔物や素材等が眠っているらしい。
「で……ダンジョンに入るには冒険者になる必要があって? この世界の俺が好きだったダンジョン配信者ってのも冒険者の派生的ってことであってる……よな?」
大体分かった情報を口に出しながらもノートにまとめて、俺はどうするかと思考する。この世界の事を知るために、何よりどうしてこの平行世界に来たのかを知るためには、ダンジョンに行く必要がある可能性があるかもしれないが……。
「皆の力がどこまで通用するか分からないないんだよな」
今見たことあるのはあのとき襲ってきたグリフォンだけ。
幼馴染みである綾音に倒されたあれを基準にしていいか分からないが、あれの種族を異世界に当てはめればAランク。
それを考えると同じ強さのあれが蔓延っているのなら危険だが、感覚的にあのグリフォンはAランク相当には見えなかった。
「……にしても、懐かしいな異世界のグリフォン。嵐を起こすし堅いし速いしで結構強いんだよなぁ……ルナの好物だからよく狩りに行ったの覚えてるぞ」
……あれそういえば綾音の奴、氷姫とか呼ばれてなかったか?
あの時いた一般人の反応を見るに綾音は結構な有名人ぽかった。
その反応が気になって、改めてネットで彼女の事を調べてみれば……ネット記事に彼女の事がまとめられた。
「【氷姫】雪崎綾音――中学二年生から大手ギルドであるヴァルシアに所属している現Sランク冒険者……ダンジョン配信者としても活躍する彼女は、そのウサギのような愛らしい容姿と圧倒的な戦闘技術も相まって200万人規模のチャンネルを持つ現代でもトップな……」
記事を読み上げて少しだけだが頭が痛くなった。
なんか平行世界にいったら幼馴染みがめっちゃくちゃ有名人になってた件……みたいな言葉が頭に流れ、もう一度その記事を読んで再び頭痛に襲われる。
「えぇ……何してんだよ綾音」
確かにあの時見た魔法はかなりレベルが高かったが……まさかこんな事になってるとか思わない。というか、ついでに配信サイトで見てみれば確かに彼女のチャンネル登録者数は二百万規模で……。
「とりあえずあれだな、もうちょっと色々知りたいが……ひとまずダンジョンに行ってみるか」
もう二度と俺は異世界と同じ経験をしたくない。
……でもその前に俺の仲間達がどこまで出来るかを知っておかないと、何かに巻き込まれたときに困るので確かめておきたくはある。
「確かダンジョンは解放自体はされてるらしいし、姿隠せばなんとかは入れるだろ」
そう決めた俺は、召喚魔法で異世界の魔物から作った隠れ兜と認識阻害の効果を持つローブを装備してこっそり家から出た。父さんも母さんも共働きで今日はいないし、実行するなら今しかないと思ったからだ。
完全ステルス、音も匂いも消せるこれさえあればバレないだろうしと思いながらも、近場にあるらしいCランクに分類される黒鉄のダンジョンという所に潜ってみることにした。
警備員がいないことを不思議に思いながらも、隠れ兜を身につけたままダンジョンに潜れば――そこには完全なる異界が広がっていた。
洞窟風のダンジョンに入ったはずなのに……そこに広がるのは蒼穹。
空があり崖や山があるまるで一個の世界を切り取ったようなその場所――俺がいた異世界の如き光景に目を奪われるも、懐かしさすら覚えてくる。
でも、それと同時に微か……どころではない嫌な予感。
「……来る途中に調べたけど、洞窟型とかいうダンジョンだよな? 黒鉄って。それにオークとかいないって見たけど」
どう見ても山があるし……何よりすっごく既視感のあるワイバーンとかが――。
「……あれ、入るダンジョン間違えた?」
『GAAAAAAAAAAAAAA!』
不味くないか?
そんな事を思うと同時に……聞こえてくる咆哮。それどころか急に特大の火球が飛んできて俺のいた足場を破壊する。
「あ、ちょ――いきなりかよ!」
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