第17話
すると、結局優しい王子が先に折れる。
「…分かったよ。でも――」
「―――!」
その瞬間、王子に引っ張られた。
「千亜稀が先。咲人は後。分かった?」
―――!!!
ギュッと抱き寄せられたあたしはの肩に、王子の腕が回っている。
真正面に咲人くんと向き合って、そのキョトンとしている瞳を見つめた。
キョトンとした後、咲人くんがにっこり笑う。
その顔は、あたしよりも高い位置。
初めて出逢った時と、この部分も違っている。
「もちろん。将来の“お義姉さん”だからね」
咲人くんはそう言って、おじ様と同様この部屋を出て行った。
「――…」
結局、王子と二人きり。
王子の腕がまだあたしの肩にあって、おじ様の言う言葉を思い出した。
『克穂は喜んでいるんだよ』
ボンッ!!
(あわわわわわわっ…!)
勝手に脳内がその言葉を思い出し、あたしは必死に頬を押さえる。
今、ここで赤くなってしまうと王子の腕が肩に回ってるせいだった勘違いされちゃう!
頬を押さえた瞬間、王子がカー…ッとなっているあたしに、気づいた。
「…何で赤くなってんの?」
ニヤリと笑う口元が視界の隅に入ってくる。
「な、な、なんでも!!」
あたしは咄嗟にそう答え、王子の腕からすり抜けた。
「おい、千亜稀…!」
王子があたしを追いかけようとした瞬間…。
「克穂様、千亜稀様。お食事の用意が整いました」
「――!」
メイドさんの一礼が部屋の中に溶け入った。
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