第16話

王子が、ずっと…あたしを連れてきたかった?



連れてくることが出来て…喜んでる…?




おじ様の言葉を反芻し、あたしが一人アルバムを広げている時だった。




「おねーちゃんっ」


「!」



突然、後ろからそう呼ばれた。



この声は――…。



「咲人くん!」



ソファーの背に腕をつき、あたしを見つめている。



「あ~!パパに貸してもらったんだ?どう?可愛いでしょ?お兄ちゃんの小さい頃」



そう言って、開いていたページの王子を指差す。



おじ様いわく、このアルバムを見せてあげてと言ったのは咲人くんだった。



ずっと前に話した内容を、咲人くんは覚えてくれていたのだ。



「あ、うん!咲人くんがおじ様に言ってくれたんでしょ!?ありがとう!」



あたしはアルバムを小さく持ち上げて、咲人くんに言う。



すると、ソファーをぴょんと跨って、咲人くんが隣に座った。



「今度はお姉ちゃんのアルバム、見せてね」



満面の笑みでそう言う。







「うん!もちろん――」



そう答えようとした時だった。



「それは是非、拝ませてもらわないと」


「!!」



後ろから、全然そうは思っていないであろう声。



声の主は、もちろんあの人。


王子様。




「へぇ?いいもん見てんじゃん」




王子がそう言って、あたし達が座るソファーにやってくる。



「お兄ちゃん!明日の式、楽しみだよね!」



咲人くんは王子を見るなり、いつものように飛びついた。



もう、咲人くんも背が高くなっているので…若干ボーイズラブの雰囲気が漂う。



「…咲人。いい加減、その抱きつく癖、なおさないと」



そう言って、咲人くんを剥がした。



「やだ~~~!僕はいつまでもお兄ちゃん子なんだ~~」



咲人くんはそう訴え、王子に抱きつこうとする。



そういうやり取りを真横に見ながら、あたしは感じる。



咲人くんは、言うことは変わらない。



最初出逢った時と何ら変わらない。



でも…。



その言葉の中に、余裕というか冗談というか…。



言葉では上手に表現できないものが見え隠れしている。



そう感じる。



…言葉の裏に真意が見え隠れするのは、この家系の血筋なのだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る