第13話

その優雅な手のひらに誘われて、あたしは茶色の質感高い大きなドアをくぐる。



そこには新しいとは言えないが、その使い古された質感が、逆に高価であると物語っている物々達の置かれた部屋だった。



本物の、暖炉がある。



「ぜひ、千亜稀ちゃんに見せておきたいものがあったんだ」



おじ様が言った。



「へ…?」



あたしはこの部屋に奪われていた意識を、ギュッとおじ様に向ける。



すると、後ろに立っているおじ様がある冊子を持っていた。



「これを、見てみないかね?」



そう言って、暖炉の傍に置かれていた広いソファーに腰掛ける。



「え…」



あたしは不思議に思いながらも、おじ様の傍に近づく。



促されるまま、おじ様の隣に腰かけた。



おじ様の手に握られた冊子には、“Memorial of Katsuho”と書かれている。



「…え……?これ…」



あたしは、その表題を見ておじ様を見上げた。



すると、おじ様はパチリとウインクをしてあたしに言う。



「咲人に聞いていたんだ。千亜稀ちゃんに“お兄ちゃんのアルバムを見せる”と約束した、とね」



そう言って、おじ様がアルバムを開いた。



あたしは、その中に広がる、王子の幼少時代に触れる。



「……わぁ…!」

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