第10話
赤ちゃんを抱き上げるようにして、あたしを絨毯の上に立たせた。
「ほんと、世話の焼ける…」
その瞬間、こんな憎まれ口も意地悪な言葉も、全部が全部愛しさに変わってしまう。
そんな王子に、あたしは口元を緩めてニヤニヤと笑った。
「……キモい」
「ッッ!」
ニヤけさせたのは王子なのに、そんなことを言う。
幸せや愛しさも忘れて、あたしはガツンと顔を歪めた。
「……痒い、ですわね」
―――!
すると、そこに突然マミヤちゃんの声がする。
「え…っ」
あたしが振り返ると、そこにマミヤちゃんと充くんの姿があった。
充くんちの自家用ジェットで到着していたらしい。
「おじさん、よくもまー何も言わずに見てられること」
充くんが呆れるようにして、階段の上から言う。
ここは、本物の緩やかな螺旋階段。
いつぞやのパーティー会場を思い出す。
「…これが佐伯原家の愛情表現だからね」
そう言って、おじ様は2階へと足を進めた。
そんなおじ様の発言に、あたしはキョトンとする。
(これが…佐伯原家の……愛情表現!?)
キャッと口元を両手で隠す。
「…あーぁ。おじさんのせいで、ちーちゃん、また一人旅立っちゃった」
鼻で笑うように言う充くんのことは、この際無視。
あたしはニヤける顔を堪えられずにいた。
てことは、て、いうことはぁ!?
おじ様も、おば様にこんな風に愛情表現してたっこと!?
少しだけ意地悪で、なのに肝心なとこは優しくて。
なのになのに、素直じゃなくて憎まれ口ばかり…っ。
想像すると、顔がニヤけてたまんない。
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