第9話

「ほぇ~…」



目の前を占領するものを見て、あたしはお腹の底からそんなマヌケな声が出た。



王子はやっぱり、本物の王子様だったらしい。



目の前に、本物のお城が立っている。



「…薫の趣味でね。こういうアンティーク的なデザインのものが好きなんだ」



おじ様はため息の中に笑顔を隠して、小さく言った。



おじ様がドアに近づくだけで、執事の方がドア…門を開けてくれる。



「さぁ、こちらに」



おじ様に促され、あたし達はお城の中に入った。



「う…うわぁ…」



王子の実家と同じ雰囲気の、城内。



シャンデリアは多分色違い。



ふかふかの赤い絨毯に足が取られてしまいそう。



「きゃっ!」



数歩歩いたその瞬間、あたしは足を取られて転んだ。



「……馬鹿?」


「!」



座っているあたしに、王子は言う。



憎まれ口ばっかり!


いつも意地悪ばっかり!!



あたしはブーッと頬を膨らませて、王子へと振り返った。



その瞬間。



―――!



「よっ…と!」



王子に抱きかかえられる。

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