第6話

あたしは驚いて、バッと口元を押さえた。



「な、何すん…っ!?」


「そこまで誘っといて、“何する?”はないだろ。その為の自家用ジェットだろ」



どの為だよ!!



あたしはすかさずツッコむ。(心の中で)



「…あっ…」



そのツッコミも、心の声と消え、あたしは王子に囚われる。



「━Private━」



王子が座席近くのボタンを押して、明るく点灯するランプ。



自家用ジェットの凄いとこって、こんなプライベートルームまで築けちゃうとこ。




「…もっと可愛い声、聞かせてよ」


「――…っ」



穏やかに溢れだす空の上、甘い瞳の王子に酔わされる。



あたしを映すその瞳に捕まると、あたしはもう抵抗なんか出来ない。



甘く甘い余韻が、余波が、あたしをさらっていくから。




「…ん…っ」



王子の唇が重なって、背中にはふかふかのシート。



明るい場所で愛し合う、そんな破廉恥な状況に、あたしの胸は響き合う。




「…千亜稀、可愛い」




温かな日差しの中、王子との緩やかな時が永遠であることを信じていた。

















上空を飛ぶ鉄の機体が、夕暮れの世界へ突き進む。



愛し合うあたし達を、愛し合う二人が待つドイツへと運んでいた。

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