第2話

あたしはギリギリと歯を軋ませながら、王子を睨む。



「お、起こしてくれたっていいじゃない~~~~!!!」



うわ~んと吠えながら、そう言った。



「村岡―――!人を頼るなぁ~~~!!」



先生の、そんな声にどやされて、あたしは一人肩を落とす。



波乱万丈な人生は、王子の婚約発言くらいでは覆せない。



…そう、婚約発言くらい、では。


………ニヤリ。




思い出すだけで、全てがハッピーになってしまう。



バラ色全開!



あたしの人生バラ色メモリー☆



うふふっと笑って、あたしは廊下に立っていた。







高校2年の秋。


王子が言ってくれたあの言葉。




『18んなったら、婚約しような』




…って、囁いてくれたあの瞬間。




寝起きだったあたしの意識は、一瞬で覚醒した。



甘い、甘い感覚だった。



心の中が、すぅーっと澄み渡るというか…、甘い感覚だけが広がっていくというか…。





あたしは瞼を閉じて、うっとりと物思いに耽っていた。



「……寝てる?立ったまま寝てる?」



(――!)



ヒソヒソと、人の話す声がする。



「ニヤけてる…」


「立ったまま寝てて、しかも夢見てるってこと?」




そんな囁き声に、あたしは小さく目を開く。




―――…?



「ギャッ!!」


「わひゃっ!?」




目を開いたその場所に、たくさんの顔があってあたしはビクッと体を揺らした。

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