『運試しロープ』

「これは妖怪好きの先輩からもらった話なんだけどね」放課後の部室。

机の上に腰を掛けた先輩が口を開く。

きっちり絞められた詰襟。

表情は、逆光で良くわからない。

「空からロープが垂れ下がってるって言うんだ」


なんだろうこれは、と思ってロープをまじまじと見るも特に変わった様子はないがその先、垂らしている「もの」が何なのかは識別出来なかった。

「上を見上げてもさ、ず~…っと先まで伸びてて見えなかったんだ」


ものは試しと伸ばした指先がロープに触れた瞬間、頭に浮かんだのは「蜘蛛の糸」と「釣り糸」。

あぁ、自分はロープの先にある「もの」を確かめようと手を伸ばしたが、相手からしたら「何が掴むか」の運試しなんだ。


「そこで急に我に返って、慌てて手を離しましたよ。

だって嫌じゃないですか。“裁かれる罪人”になるのも、“捌かれる魚”になるのも。

どっちも命は助からないでしょうし。ねえ?」

体験者の方はそう締め括った。




芝生/いい/暗裏/八重垣


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